tifon

Open App
8/6/2023, 11:06:43 AM


それは孤高のGiver

いつか必ず燃え尽きる運命のもと
周りに熱を 光を エネルギーを注ぎ
限りない恩恵を与え続ける

強い力で全てを引きつけながら
その身に近づきすぎれば焼き焦がす
何も求めず ただただ与える存在

今日も太陽は燃やし続ける
自分を、そして終わりまでの時間を



「太陽」

#187

8/5/2023, 10:56:57 AM


4時間目終了の鐘の音とともに
クラスの5分の1ほどが席を立って駆け出す
急げ急げ

ただでさえ4階の教室は不利
どの教室からも険しい表情で飛び出してくる
向かうのは一階中央廊下の交流スペース
出張パン屋さんが店を出しているのだ

余裕の笑顔でゆっくり行くのは予約組
2時間目の中休みに予約票を投函済みの奴ら
授業が長引いたら予約もできない
教室の位置にしろ、もっと公平にできぬものか

友から託されたリクエストメモを握り締め
負けるわけに行かない戦場へ走る
すでに遠くから騒がしい声が聞こえている
間に合うか…ッ 間に合ってくれ!

飢えた人だかりから次々のびる手・手・手
お店の人は慣れた様子で次々捌く
飛び交うパンと小銭
選ぶ余裕はない、とにかく数は揃えねば

亡者の群れの隙間から手を伸ばして掴む
ヨシ!数量確保だ、
「ください!!!」
友の、私の空っぽストマックを満たしてくれる
愛しいものたちよ

戦利品を確認しながら教室へ急ぎ戻る
おおおお
コロッケパン、焼きそばパン、ハンバーグパン
ハムサンドにメロンパンだ 

1人菓子パンだが仕方ない少しずつ分けるか
予約なしでハンバーグパンまで得られるとは
上々の収穫に胸を張って帰還する
「みんな、お待たせ!!」

より良い予約方式について議論しながら
パクつく我ら
あんまりスマートな仕組みになるのも
かえって味気なくなったりしてね

あー惣菜パン美味しすぎる




「鐘の音」

#186

8/4/2023, 10:33:55 AM


あつい、、
あつすぎる毎日
駅のホームで電車を待つのは
ホットサンドメーカーで焼かれるようだ
屋根が熱をうまく集めているのだろう

熱風が吹きつけたとき考えた
これは…
今は日本は真冬、休みをとって
南国に来ているのだ
輝く太陽、青い空 白い雲、熱い風!

底冷えに震えて厚着をしていたのに
今やワンピース一枚で風に吹かれている
太陽のエネルギーを体内に貯め込んで
帰国後の寒さに備えよう

さあこい、サマー・ヒートウェイヴ!!

(短時間なら思いのほか有効)




「つまらないことでも」

#185

8/3/2023, 11:58:21 AM


あなたが眠っている間に

小さな手の 柔らかな薄い爪を切り
額に張り付く髪もそっと切り
おもちゃを片付け
アイロンをかけ
夕飯の下ごしらえをし
ポットに湯を沸かして
香りの良いお茶を淹れる
カップに注いでクッキーなど準備する

すると大抵ちょうどのタイミングで
あなたが目を覚まして泣き出すのです
オムツかな?ミルクかな?

お茶は冷め切ったころに一気飲み


ほんとにたいへんだったけど
…懐かしい日々


「目が覚めるまでに」

#184

8/2/2023, 10:56:33 AM

父の個室に足を踏み入れると
見慣れない大きなブロンズ像
壁には風景画

病室にこんなものなかったはず

一緒に訪れた母も驚いていたが
父が病床から百貨店の外商に連絡して
買い入れたものらしい

子どもだった私にその是非はわからなかったが
周囲がにじませる呆れた雰囲気は感じた

その後本人も美術品も病院から無事搬出され
武勇伝か笑い話のように扱われていたけれど

あれから程なくして世を去った父は
大勢で賑やかにするのが好きで
人一倍子煩悩で家庭を大切にしていた
いつも前向きで
悲観や無気力を嫌った

真っ白で殺風景な病室でひとり
運命を呪ったり自分を憐れんだりするよりも

美しいものを目にすることのできる喜びと
いま命がある幸運に感謝していたかったのか

ずっと理解できないまま
記憶の底に沈んでいたけれど

いつか入院したり施設に入ったりする時には
この絵とこの絵を部屋に飾れたらいいな、
などと考えていると

心の奥の扉が不意に開いて
あの時の父の思いが静かに胸を浸した



「病室」

#183

Next