世界の終わりは
特別なことではなく
昨日も 今日も 明日も
毎日が
誰かにとっての世界の終わり
心が潰れること
身体が潰えること
世界が終わるとき
わたしの思いは魂は
まっすぐに
あなたのもとに飛ぶ
「世界の終わりに君と」
#128
想像力たくましい心配性で
何かにつけ最悪の状況を想像してしまう
主としてこれだ
大切な人の身に何かあったらどうしよう
その都度自分に言い聞かせる
可能性はあるが小さいと
最悪に備えて普段から心がける
後悔しないように
たくさん会話する
たくさん感謝を伝える
早めにちゃんと謝る
そんな事しかできないのだけど
うるさくてゴメンとも思うのだけど
大切な人たちを失ってきて
そうせずにはいられない
「最悪」
#127
「手ぶくろを買いに」を読んだあと、
息子ににこんな話をした
あのね、
おかあさんも本当は狐なの
人間のお父さんと結婚して
あなたが生まれたのよ
他の人たちに知られたら
もし狐なのがわかったら
いけないの
だから誰にもないしょよ
狐でもなんでも、
おかあさんはあなたのこと
誰よりも大好きよ
何よりも大切よ
お話の 狐の親子の情愛が
胸にあんまり沁みたから
あなたをおもう気持ちは同じと
息子は
うん、わかったと言ってくれて
夫には
子どもにそんな事言うもんじゃないと
叱られちゃった ゴメンナサイ
「誰にも言えない秘密」
#126
子供のころは
とても広くて走り回っていた
隠れる場所もたくさんあった
何年かぶりで訪れたら
家は小さく
部屋は狭くなっていた
あれ?もっと広くなかったっけ?
そりゃあ、自分が大きくなったんじゃ
と笑いながら言うおばあちゃんも
ひと回り小さくなっていて
あの眩しかった夏の日々から
わたしはもう
はみ出してしまったのか
「狭い部屋」
#125
「あ〜、素敵な恋愛したい!」
そう願う人は多くても、心が粉々になるような失恋がしたい、と願う人は少ないのではないだろうか。しかし物好きはいるもので。
「あなたと味わう失恋の味」
そんなテーマのディナープランがあると聞いて、海沿いのこじんまりとしたビストロに彼とやって来た。恋愛中の私たちが失恋を味わうって何?と面白がって。
大きく窓の開いた、目前に海の広がるテーブルに案内される。ちょうど夕陽が沈みはじめた、サンセット・ディナーだ。プレートの上に置かれたのはメニューではなく、但し書き…?
「失恋プランへのご参加ありがとうございます。これから楽しんで頂くのは、幸せなお二人にとっての最後のディナーです。今夜を境にもう、二度と会えない。今までお二人がともに過ごした日々を思い出し、語り合いながら、ゆっくりとご堪能下さいませ。」
えっ。そういう事か。なり切って楽しむってことね。そんなの上手く行くのかな?彼と私は顔を見合わせて苦笑いしつつ、せっかくの趣向だからその気でやってみるかということになった。
食前酒のスパークリングワインを飲みながら、初めて出会った日のこと。第一印象はどうだった?なんて改めて聞くのも甘酸っぱい気持ち。
オードブルのホタテと地野菜のマリネが美味しい。夕陽が沈んで、空の色が海に馴染んでいく。一緒に観た映画のあれこれ、出演俳優のその後についてなど。
冷たいにんじんのポタージュは先刻までの夕空の色。美味しいね、と言いながら二人で出かけた食べ歩きの話になり、あちこちで食べた何が一番か、ランキングを考えたり。お互いの好みや苦手なものにこんなに詳しくなっていたことも再確認。バゲットも美味しい。せっかくの海辺だからと二人とも魚を選んだメインの頃には、何度もケンカしたこと、何度も何とか仲直りして今があること、でも今日で、これでお別れなこと…って本当になり切って胸がいっぱいになってきた。
積み重ねてきた、たくさんの思い出。自分一人じゃない、二人一緒の景色がつぎつぎ脳裏をよぎる。デザートはジェラートとフルーツの盛り合わせ。メロン好きでしょ、とわたしにくれる。涙がでてきた…なんで!?なり切りなだけなのに!いやだ、そんなの。お別れしたくない!!すっかり真っ暗な景色に星が滲んで見える。きらきらしてきれい。
食後のコーヒーにはメッセージカードが添えてある。
「太陽が消えた夜空に月や星の光が増すように、失うことを思ったとき恋心はより募ったでしょうか。ディナーの間だけの失恋はいかがでしたか?どうぞ末永くお幸せに…!」
もう!募ったでしょうか、じゃないよ!
変なプラン!!ばかみたい!
でもいいか、なんだか今とても愛に溢れた幸せな気持ちになってるし。彼の方はなんだかフツーに「そういう設定なだけでしょ」とか言って澄ましていて腹が立つけど、さっき涙目だったの知ってるから許す。
「失恋」
#124