「びぇぇええええ!!びぇぇええ!!」
赤子の泣き声が騒がしい…
友人から赤子を預かってかれこれ5時間目。
4時間近く泣き続けている。赤子とは数十分で泣き疲れるものではないのか…。
もう赤子の声はしゃがれているのだけど…。
「あぁもう!体力おばけなの!?なんなの!?はいはいよしよし!ねんねんころりよー!!」
あ、やけになって大声を出してしまった。
こんな大声であやしたところで意味はないのに…
ってあれ?赤子が泣き止んできている。
「びゃあ…びぇぇ…」
うん…。なんか行けるかも!
「はいはーい!!ねんねんこーろりーよー!!よーしよしよし!!」
「びぇ…びぇ……」
「よしよォし……おやすみ。で、ツトムさん、おはようございます」
「…なにそんな大声出してんの?」
「赤子をあやしてたんです」
「それあやしになってる?君の友達の赤子を預かるか、返却するかは、私の気分次第なんだからね?」
いっつも起きるのが遅い。どうせ、赤子をあやす声で起きたんだろう。
「まぁまぁ。しっかり目を覚まして。顔洗いましょ」
「えぇ…無理。夢の中へ…ByeBye〜…」
「………起きろおおお!!!!!」
山道で、リスの死体を見つけた。
いつものように散歩をしていたら、カラスかなにかに殺されたであろうリスを見つけた。
腹をえぐられ、茶色い毛が赤く染まっていた。
血は毛にまとわりついて固まっていて、お世辞にも綺麗とは言えない。
汚いし、ダメだということはわかっていたが、つい触れてしまった。
やっぱり冷たい。
持ち上げてしばらく見つめる。
汚い、臭い、妙に冷たい。
嫌悪感ばかりが湧き上がる。
途端、リスの体がだんだんあたたかくなってきている事に気づいた。
生きている?生きている!!
嫌悪感ばかりだった感情が、急に救いたいという衝動に塗り替えられた。
リスをもって街へ走っている時にわかった。
温もりは、私の体温が乗り移っただけだった。
血で固まった毛が、柔らかくなっていた。
魔法をかけましょう。
まず、時計を見てください。
見ましたか?
ちちんぷいぷいのぷい。
また時計を見てください。
時計の針の位置が変わりましたね?
これが、魔法です。
ありがとうございました。
No.4
世良田 イト(女、17歳)
真田 玲史郎 (男、17歳)
―――――――――――――――――――――
「はー…」
「わかりやすいため息〜」
「…」
「なんで今日一言も話さないの。今日聞いた声、出席の返事だけなんだけど」
「…なんでもねーし」
「口悪っ!……お腹痛いの?ストレス?」
イトは黙って頷く。
「まったく、とりあえず、塾休もうか?塾が嫌ってことだよね?」
「今日数学だから…」
「クラス担当の人、休みとか気にしないタイプなんでしょ?勉強手伝うから、塾は休んで」
「…うん」
「出席の時にお腹痛いって言いなよ」
「変な目で見られるから」
「そんなことない、心配してるの」
「今日、夢で、皆に嫌味言われた」
「それは夢」
「リアルだった。本当にありそうだった」
「…有り得ない」
「続いてるかもしれない」
「有り得ないから」
「…次体育だけど、保健室は?」
「体育行く」
「わかった。見学しといてよ」
「うん」
「はい、行こう」
No.3
世良田 イト(女、17歳)
真田 玲史郎 (男、17歳)
―――――――――――――――――――――
「レー、やっほー」
「おうおうイトちゃん、よくやってきましたね〜」
「ちゃん付け気持ち悪いよ」
「なかなか酷いね」
土日の昼下がり、イトは玲史郎の家に来ていた。
「で、なんで呼んだの?」
「イトさー、あの〜アクション漫画読みたいって言ってたでしょ。学園モノの」
「うん。で?」
「手に入れたから、読ませてあげようと思ってね」
「えっ!いいのっ!?やったー!」
「ほんっと、漫画に目がないね〜」
「うわぁあああありがとう!この主人公も好きなんだけど、ここの人!この人の見た目が刺さるんだよね〜」
「ふーん、その人、俺と真反対の見た目だね〜」
「そー?んー、まぁ確かに」
「んー……ま、ゆっくり読んでってよ」
「ありがとう」