なんの取り柄もない僕の唯一の誇れる点は君と付き合えているということだ。周囲に気をかけ、いつでも皆の中心で周りを笑顔にできる君はびっくりするほどなんでも出来る。勉強にスポーツだって、常に上位にいる。そしてそんな君と付き合えている僕自身の誇らしさは僕の前だけで弱さを見せる君を慰め、支えていける事だ。
夜の海は長い。我々のガレオンシップはある島を目指し航海を続けている。目的はそこにあると言われている宝物だ。ついさっき日が落ちたばかりだが、漆黒の帳が船を包み、一寸先は闇という言葉をそのまま表したような世界が広がっている。しかしそればかりでは無い。空を見上げれば無数の星々が我々の進むべき道を示してくれている。船上の生活はまだまだ続く。
体の健康を維持する方法は山ほどある。トレーニングやランニング、食事や睡眠。本当に数えることは出来ないほどだ。でも僕の心の健康を維持する方法はたった一つしかない。君の笑顔を見ることだ。僕にとって君の笑顔は最高の処方箋だ。今日も心を健やかにするために学校に行く。
このハイルデンの土地の11人の魔女のうちの一人、音楽の魔女の通り名を持つ君は僕の幼なじみだ。君の奏でる音楽は聞くもの全ての心と体を癒し、魔を払う能力を持っている。剣士である僕は君とのパーティーは今まで数々のモンスターを屠り、たくさんの宝物を見つけてきた。そんな僕たちの冒険はまだまだ続くだろう。これからも彼女の音に助けられながらたくさんの世界を見つけていきたい。
向日葵が太陽を向く季節、僕は彼女に出会った。真っ白なワンピースと麦わら帽子が良く似合うアニメのヒロインのような彼女は僕の前に現れた。大きな入道雲を背景に振り返った君はなんだか夏の間だけ現れる妖精のような気がした。そんなことを考えていると「どうしたの?」と君に声をかけられ、少し動揺した僕に「大丈夫?」と小馬鹿にしながら眩しい笑顔が僕の夏を照らす。まだ夏は始まったばかりだ。