あと5年。あと3年。あと1年。あと1日。
やっとあなたに追いつけると思ったのに、あなたはそれよりずっと先にいるみたいだ。
白い泡をぼんやりと見つめる。カランと氷の音がして顔を上げると、あなたの笑顔があった。
楽しみにしていた自分が馬鹿みたいだ。
ねえ、一体いくつになれば、その笑顔を見なくてすむんですか。
「月が綺麗ですね」
夜空に輝く三日月を見て、君がそう言った。
ちょっと頬を赤らめて言うものだから、軽く返事をするなんてできなくなってしまった。
それが僕の期待する意味ならば、僕は夏目漱石とやらを恨む。それがそのままの意味だけなら、どれだけ楽か。
僕は僕と、君を嫌いになりたいからこう答えてやった。
「……欠けた月は、綺麗じゃないよ」
嫌いになりたいものがまた一つ増えて、目を伏せた。
ドアを開けると、そこは白に覆われた世界だった。
珍しい、と呟くと、白い息がもれる。
緑の木も、青い屋根も、赤い車も白くて、日常が知らない風景に変わっていた。
かじかんで赤くなった手で白をそっと受け止める。それはすぐ透明になってしまったけど、じゅうぶん。
私もこの世界で、降り続ける白の一部になれた気がしたから。
「ずっと一緒だよ」って言葉を人生で初めて言ったのは、きっと君だった。
その言葉を言っても怖いと思わなくて、本当に嬉しかった。泣いてるのを隠すために君を抱きしめたっけ。君はすごく驚いていたな。
君は今日だって綺麗な青い瞳で僕を見つめる。きっと明日も変わらず、一緒にいてくれる。
「ご飯食べる?」
そう言うと君は窓際から降りて、僕のところに歩いてくる。
にゃあ、という声と共に、尻尾が揺れた。
たぶん外は寒くて。でも澄んだ青がどこまでも広がっていて。
そんな想像をしながら暇を持て余している。
用事があるわけでもなく、横たわっている液晶を光らせる。
ふと、一つのアイコンが目に入った。何ヶ月前からあっただろう。しばらく開いてないな。
たぶん外は、澄んだ青がどこまでも広がっていて。でも寒い。
暇をつぶすためにまた、そんな想像を書いてみようか。
用事があるわけではないけど、アイコンをタップした。
———
数ヶ月ぶりに戻ってきたら前のアカウントが使えなかったので新しく始めます
天音みたいな名前だったと思うので天音にしときます