泣かないよ
たとえ、1人だけ入賞できなくても。
たとえ、好きだった人が死んだとしても。
たとえ、明日生きているかすら分からない状態になったとしても。
だって泣いたら潰れるから。
いやでも認識してしまうから。
それならば泣かない。悲しくなどない、涙などでない。
そうして蓋をして、静かに少女は落ちてった。
枯葉
パキパキと枯葉を割りながら、箒で枯れ葉を吐く。
吐いた枯葉をまた割って、枯葉の残骸積み上げた。
吐いて、掃いて、履いて
掃除にはならなかったけれど、楽しかったのでヨシ
今日にさようなら
落ちていく日と、去っていく友人の背を眺めながら月を待つ。
この静かな時間が、終わりを感じるこの時が、一日の中で一番好きな時間だったりする。
たとえ作り物であろうとも、日も月も美しい。
たとえ機械であろうとも、友人がいるのは嬉しい。
もう終わった世界で、次の日が来るのを待つ。
今日にさようなら、明日におはよう告げるため、僕は今日も生き続ける。
お気に入り
お気に入りのものはずっとずっと大切にしておきたいけれど、大切にすればするほど壊れてしまう。
私には長持ちする使い方を知らないし、大切だと思う気持ちも本当は分かっているかどうかさえ怪しい。
私のお気に入りは、もしかしたら私に大切にされていないのかもしれない。
それでも、それでも私は、大切にしているつもりなのだ。
だから今日も、私は私のお気に入りを壊すのだ。
10年後の私から届いた手紙
タイムカプセル。それは、未来の自分に向けて埋めておくもの。だから普通は、10年前の手紙が入っているのだけれど。
入っていたのは、"10年前の私へ"というタイトルの手紙だった。
書き間違えたのか、はたまたふざけていたのか。10年前に書いたであろう手紙だと思って開いてみれば、驚くことが書かれていた。
"10年前の私へ、ちゃんと生きていますか?私は今、生死をさまよっています。なんでも、とある実験の被験者になったそうで。あなたが生きていれば私も生きているし、あなたが死んでいれば私も死んでいるようです。
私が生きているか、死んでいるかはあなたの生死に左右されるということです。もし、生きているのならば…
翌日、1人の少女の遺体が発見されたが、それが誰であるかは分からなかった。