しるべにねがうは

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12/24/2024, 1:45:38 PM

イブの夜

「クリスマス・イヴにケーキはいかがですか〜!まだ間に合いますよ〜!なんと2割引き!ホールのケーキが今なら2割引ですよ〜!」
「1人でも家族でも美味しいホールのケーキが2割引き!どうですか〜!」

クリスマス。良い子の枕元にプレゼント出現まであと……6時間くらいか?とりあえず暇をもらったものの誰をどう誘えばいいか全く検討がつかずだらだらしていたらクリスマスケーキ販売の売り子に貸し出された。
誰だよ俺がぼっちで暇してますってリークしたやつはよ。

「バイト初めてって言ってたけど緊張しないし声出るし力持ちだしやるねぇ君、新年も頼んでいい?商店街福引の店番バイトがあるんだけど」
「んんぁあ……考えときます」
「ウーン微妙なお返事!28日までに決めておいてね!忙しかったら断ってくれて大丈夫よ!」
「や、多分暇なんで……ア、でも寒かったら寝てたいんで…」
「豚汁もストーブもあるよ!まァ無理しちゃダメだね」
「ウス」

ケーキ売りのリーダー?はトナカイ帽子に着ぐるみそして赤鼻というザ・クリスマスのコスプレで俺はそこそこぬくぬくしたサンタ服。やさしさを感じる衣装選びである。ありがたい。

「もう時間なってきたね、お迎えくるよ」
「まじすか」

何時終わりとかあったんだこれ。朝8時に連れてこられてなんやかんやずっといた。昼はターキーと味噌汁とピザ、晩はチキンとラーメン食べた。商店街色々ある。次は駅前のパン屋制覇してぇな。
そういや今日お嬢の護衛なしで一日いたけど何も無かったな。
オバケにもクリスマスって概念あんの?この日フィーバーしてる怪談とか全然無いな。フィーバーしててもクラブとかにいそう。

ちなみに現在時刻は午後6時半。
朝はリーダーに連れてこられて夜は誰が迎えにきてくれんのかな。1人でも道はわかるけど道中で変なやつに引っかかりたく無いので素直に待つよ俺は。白い息を吐き出していたら何処からか鈴の音が響いてくる。シャンシャンシャン、シャンシャン、いやまてまじかよ。マジで鈴の音が聞こえる。そこまではいい。サンタコスの石蕗さんは割とハマり役だし。でもなんかそれでおわらねぇ感じする。だって馬の蹄の音がする。

「お待たせしました尾上くん、いい子にしていたのでこれから登山を開始しますよ」
「なんで!?ねぇなんで!?!?」
「無病息災悪霊退散、商売繁盛開運、いろんな神社を回ってご利益総取りと行きましょう、もちろん挨拶を忘れずに」
「なんで馬!?どこから連れてきたの!?」
「この子は如月号ですわ、今日やっとこちらに迎えることができて、嬉しいです」


加筆します

12/21/2024, 11:53:52 AM

おおぞら

見上げればいつもそこにある。
「何処までも広がる」「突き抜けるような」「晴々とした」。

鳥羽ばたく空、雲流れる空、陽が昇る空、どれにしても人が空に抱くイメージというものはある程度『自由』の要素がある気がする。

昼間なら。

『こんばんは。こんばんは。こんばんは。どうしたの。どうしたの。どうしたの。あぶないよ。あぶないよ。あぶないよ』

物陰で息を潜める。心臓が口から飛び出そうだ。
耳がばくばくとうるさい。呼吸が苦しい。だけど息を吸った音があれに聞こえたらと思うと。

『いたいよ。たすけて。たすけて。たすけて。だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ。』

探されている。ずるりずるりと聞こえるのはアレが体を引きずる音だ。10本はある腕で、重そうな体を引きずる音。べたりべたりと壁を地面を這う音が、だんだん近づいてくる。
どうしてこうなった。いつも通りの朝、いつも通りの仕事、いつも通りの帰り道。それなり努力して妥協して普通に、いきてきただけ、SF小説ならきっとここで主役が登場するんだろう。
だけどこれは現実だから、

『みぃつけた。みぃつけ、た、みつけた』

あぁ、夜がこんなにふかい。



あしたのあさは、こなかった。

12/16/2024, 1:36:33 PM

風邪

「まぁわかってたよお嬢が引くわけねぇんだよ風邪をよ」
「何処に向かって何言ってるんですか貴方」
「石蕗さんこんちはーッす、ゲッホ」
「のど飴いりますか、葛湯も選択肢にあります」
「あー、のど飴で。甘いやつがいいです」
「みかんですね……こっちの方が効果は確かですがまぁ、舐めたくないのは、口に合わないのは仕方ないですからねぇ…」
「ははは、すみませんせっかく用意してもらったのに」
「冬は乾燥するでしょう、常備しているんです。なのでそこまで気に病まなくて結構ですよ」
「そりゃ良かった」

後日加筆します

12/15/2024, 2:15:50 PM

ゆきをまつ

「……今日も雨だな」
「曇りですわよ」
「や、降っても雨か、と思って」
「……暖かいですからね今年は。お好きですか、雪。」

意外です、と続くお嬢の言葉は全く持ってその通りだ。
全然好きじゃない。寒い。冷たいし。土が混じれば汚いし、
転べば濡れるし。いい事は一つもない。なかった。
腹減って食った事あるけど腹を壊しただけだった。
かき氷食い放題、って思ったんだけどな。
冬の雪夏まで保存して売ってんだと思ってた。

「好きじゃねぇんだけど、まぁ、待ってる」
「何かいい事でもあるんですの?」
「全く」
「じゃあ、いい思い出があったんですね」

だからきっと、待ち遠しいんですのよ。

「そうかねぇ」
「私は好きです、ふわふわして、冷たくて」
「聞いてねぇよ」
「椿の花がとっても綺麗なので、大好きです」

お嬢の中心にあるのはいつもそいつである。
24時間惚気を喰らうのはちょっとばかし堪えるが。
しかしお嬢が1番幸せそうなのがあいつの話をする時なので。
ちょっとばかし、譲ってやるか、と思うのであった。

12/14/2024, 12:46:30 PM

イルミネーション

「綺麗ですわねぇ」
「オバケの死骸が焼けてる風景とかじゃなければな…もっと平和な光景で言いたいなそれ」
「我儘ですよ尾上君、残業で残ってる方が1人もいない状態でこの焼け野原が見れるんですからこれで満足してください」
「言っちゃったよ焼け野原って」
「燃える赤が綺麗でしょうゆらゆらしてて。人は炎が燃えている所を見ていると落ち着くと石蕗も言ってました」
「ものには程度があるぜお嬢、暖炉とか焚き火とかの話だろそれ」
「大は小を兼ねると言いますから」
「これ俺が我儘かな…」
「人には好みがありますから仕方ないですよ」
「俺の好みの話になってる……」
「私はこのくらいの方が好きです、暖かいので」
「そう言う問題!?」

もはや風景に求めるものじゃねぇ。
俺は昼間の…お化けがいない場所がいいな、と思ったけど大抵何処かしら誰かしらが死んでいる。いない場所の方が無いだろう。
神社とかが1番いない気がするが。
昼間の神社が1番好きです。
オバケいないから。

いや俺もお嬢のこと言えねぇな?
でも安全って大事だろ。

「俺は危なくないならなんでもいいや…」
「情緒がありませんわよ」
「オバケの死骸が燃えてる風景のなか情緒も何もないだろ」

俺もいつかお嬢くらいオバケ対処術を身につけて、柳谷邸を出て行く時。その時やっと目の前の風景を美しつ思えるのかな、なんて考えたりしていた。



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物事を楽しむためには精神的余裕が必要という話。

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