しるべにねがうは

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おおぞら

見上げればいつもそこにある。
「何処までも広がる」「突き抜けるような」「晴々とした」。

鳥羽ばたく空、雲流れる空、陽が昇る空、どれにしても人が空に抱くイメージというものはある程度『自由』の要素がある気がする。

昼間なら。

『こんばんは。こんばんは。こんばんは。どうしたの。どうしたの。どうしたの。あぶないよ。あぶないよ。あぶないよ』

物陰で息を潜める。心臓が口から飛び出そうだ。
耳がばくばくとうるさい。呼吸が苦しい。だけど息を吸った音があれに聞こえたらと思うと。

『いたいよ。たすけて。たすけて。たすけて。だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ。』

探されている。ずるりずるりと聞こえるのはアレが体を引きずる音だ。10本はある腕で、重そうな体を引きずる音。べたりべたりと壁を地面を這う音が、だんだん近づいてくる。
どうしてこうなった。いつも通りの朝、いつも通りの仕事、いつも通りの帰り道。それなり努力して妥協して普通に、いきてきただけ、SF小説ならきっとここで主役が登場するんだろう。
だけどこれは現実だから、

『みぃつけた。みぃつけ、た、みつけた』

あぁ、夜がこんなにふかい。



あしたのあさは、こなかった。

12/21/2024, 11:53:52 AM