しるべにねがうは

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9/29/2024, 5:23:13 AM

別れ際に

「なんか、思ってたのと違うって言うか」

放課後、誰もいない教室、男女が2人。

「や、俺もさ、彼女が欲しかっただけで君じゃなくて良かったんだなーって感じになっちゃって、なんかごめんね、ほら君芸能人のあれあの人に似てるからほら、でも君全然一緒にいて楽しくないし会話できないし暗いし。告白してくるくらいだから好きにして良いんだと思ったら違うし。ふざけてんの?とにかくこれ以上俺に関わらないで欲しいんだよね」

押し殺しきれなかった嗚咽。床に落ちる涙の音。

「じゃ、バイバイ」

そのまま一度も振り返ることなく、男子生徒は教室を後にした。
スタスタと軽い足音が廊下に出て、聞こえなくなってようやく、女子生徒の涙が溢れた。

夕暮れに染まって1時間後、涙の跡が残るものの、女子生徒は1人帰路に着いた。泣きすぎて痛む頭を鬱陶しく思いながらも、足取りはしっかりしていた。

そして俺たちもようやくお家に帰れたのでした。
ずっと縮こまっていた体を解す。教卓のしたって意外と広いんだよな。覗かれたらめちゃくちゃ気まずかったけどなんとかなって良かった。

「いきなり別れ話始まった時まじでびっくりしたんだが」
「なんですのあの生徒!なんですのあの男!!」
「忘れ物取りにきただけなのに1時間かかっちゃった…」
「なんですのあのろくでなしー!!!」
「おちつけお嬢、ずっと服引っ張ってた俺の手がそろそろ限界」
「あいつの髪の毛全部ひっこ抜いてやります!!」
「やめてお嬢流石に可哀想だから」
「じゃあ…じゃあ!一発殴らせてください!」
「お嬢が一発殴ったら骨折案件だから駄目」

傷害罪が発生してしまう。事案です。
それに正当性を考えるなら殴るべきは彼女だろう。
あの女子生徒が全部飲み込んだのなら外野が出るのは野暮でしかないだろう。

「……我慢が美徳とは限りません」
「へぇ?だからって他人が馬鹿なことしていいって話にはならないだろ」
「声を上げなければ、侮られていくばかりです。声を上げなければ、どんどん軽く見られていくのです」

そして最後には、存在することすら認識されない。

「だから、乙女の純情を弄んだ輩にはそれなりの報復が必要だと思うのですよ」
「……その意見には一定の理解を示すが」
「でしょう!?」
「そもそもマジで他人が今出てってもね、マジで…近寄ったら駄目、お嬢あんなやつに近寄ったら駄目」
「………………あぁ、なるほど」
「帰ろーぜお嬢、それこそとばっちり食う前にさ」

教卓に隠れていた時は角度的に見えなかったのだろうお嬢が、窓の外をみて納得したように頷いた。校庭には、さっきの女子生徒とは別の女子と腕を組んで歩く男子生徒。二股とか最低。
そして男子生徒の影がずるりと蠢く。目を逸らす。俺は何も見てない見てない。

「………………私達も別れの挨拶とか決めておきますか」
「いや何の為に!?別に俺らってそういう仲じゃないですよね!?」
「何も言えずに別れるって、やっぱりなんというか、寂しい?いえ…恨み言くらい言っておけば良かったな、と後悔しそうで」
「察するにそれって多分死別だよな?嫌だよ今から最期の言葉考えて生きるとか」
「いざと言う時に後悔したって遅いんですのよ!もっとかっこいいの考えておけば良かった!って」
「それ考えてる時点で結構余裕だしもう恨み言とか関係ないだろかっこよさとか言ってるし」
「あなたの入れるお茶、人生で5番目に美味しくて好きでしたのよ、とかどうでしょう」
「なんで今から人生クライマックスのネタバレされてんの俺」
「順位の内訳は5位が貴方、4位は私、3位は矢ツ宮殿、2位は石蕗、1位は笹本です」
「納得の人選、悔しさも起きんわ」
「貴方はどうですか、かっこいい別れの言葉」
「……いやまず俺が去るって事は」
「晴れて一人前の陰陽師って事ですわね」
「今度は俺がお嬢を助けますからね!とか……?」
「再会が約束されてるタイプの別れ言葉は何か……違いますわね」
「……お嬢、健康に気をつけて元気でいてくださいね…?」
「悪くないんですが典型的な挨拶っぽさがきになりますわ」
「縁起でもねぇしやめようぜこれ!!」

翌朝。例の男子生徒がバイク事故に巻き込まれて全治6ヶ月の大怪我。

「天網恢々疎にして漏らさず……」
「まぁあれだけ恨まれて呪われていればまぁ、そうなりますよね」
「…………『あれだけ』『恨まれて』『呪われて』…?」
「愚問だと思いますが確認しますよ。聞きますか?」
「聞きません…」
「賢い判断ですね」

思ってたよりクソ野郎でした。やっぱりあの時お嬢を止めて良かったなと思いました。

9/24/2024, 2:16:54 PM

かたちのないもの

枠だけ…失礼します…
最近おおいな…夜景を進めております
うそじゃない〜よ!!

9/23/2024, 2:20:33 PM

ジャングルジム

「お嬢はスカートだから絶対のぼんなよ」
「中にジャージを履いているので大丈夫です!」
「前言撤回、お嬢がスカート汚して怒られるの俺だからやめて!!」
「汚さないように登りますので大丈夫ですわ〜!」

お嬢は公園の遊具に弱い。もう登頂してるもんジャングルジム。
昨今は撤去されてるものが多いから余計にか?
子供がいる時は遊ばないけど、遠慮をしなくていいなら全力で遊びに行く人である。ブランコ大好き。あれ子供だった時は意識しないけど子供用ってマジで小さいよな。乗れる時に乗んなきゃだよな。
というわけで俺はブランコ乗ります。だって主役の子供いないし。端役がはしゃげるのは今だけなのだ。

「ずるいですのよ、ブランコは!」
「お嬢もブランコにしろよ、座るところにタオル敷けば汚れないだろ」
「折ジワがつきますので」
「既にやらかしたことあんだな」
「こんな事なら体操着で帰れば良かったですかね…」
「それよりは笹本さんか石蕗さんにねだろうぜ、中庭作って公園みたいな風にしてって。絶対その方が良いって。」
「そうですかねぇ〜〜?今の庭は今が最高なんですよ?四季折々の花が途切れる事なく咲き続けるあの庭の努力と技術と才能を君は知らないからそんな事言うんでしょう?」
「でもそれとこれとは別じゃねぇの?あそこで走り回るわけにはいかんだろ」
「そりゃそうですよ」
「俺たちがいいなーって言ってんのは走り回る用の庭だろ」
「…………そうです、かねぇ」
「つまりドッグランだ」
「ねぇどこから犬が生えたんですか」

ブランコを漕ぎながらだらだらする会話は中途半端に心地よい。しりとりしなくていい瞬間久々すぎて涙出そう。俺たちがいる場所は普通の住宅街の公園だ。
学校の帰り道。夕方。逢魔時。条件揃い踏みだけどお化けが全くいない理由は既にここがお化け空間の中であると言う事です。ボスおばけはさっきお嬢がなんとかしました。今?石蕗さんの迎え待ち。学校出た時からずっと夕方なんだけど外では何時なんだろう。
腹時計的には七時とかだと思う。高校生の腹時計って割と信用できる感ある。まぁ俺少食だけど。
俺がブランコを漕ぐ向かいでお嬢はスイスイとジャングルジムを登ったり降りたりしている。スカートの裾を腹辺りで結ぶ作戦だ。まぁ汚れなきゃいいだろ。多少のシワはなんとかなるだろうし。

「そういやお嬢は腹大丈夫か」
「へ?怪我とかありませんよ?」
「そっちじゃなくて。腹減ってねぇ?カロリーバー食う?」
「サルミアッキ味があるなら考えなくも無いです」
「いらねぇって事な、了解」
「すみません偏食で……」
「石蕗さんなら持ってんだろうなって思ったわ今…」
「流石にもってたら拍手しますよ、拍手じゃ足りないですけど」
「俺も拍手じゃ足りねぇよ衝撃の表現には…腹踊りとかしようかな」
「されても困惑しかしませんよ」
「なんか食べ物あります?って聞いてサルミアッキ出てきたらその方が困惑するけど俺」
「その流れで腹踊りされた石蕗どんな顔したらいいんですか」
「笑えばいいんだよ、笑えば……」
「引き攣った笑いしかないですわよ、やめてくださいちょっと想像しちゃったでしょ!」
「笑いながら言ってんじゃねぇよ、ねぇそんな面白そうなの石蕗さんの引き攣り笑い?」
「石蕗が笑顔じゃ無い時って…無いでしょう、想像つかないんですよ、もう想像上でしか無いのに面白そうなの酷いでしょう!?」
「今の俺が悪いの!?よっしゃもういい、石蕗さんが来たら聞こうじゃねぇかよ、なんか食いもんあります?って」
「サルミアッキ以外が来たらどうするつもりですか」
「どうもしねぇわ!いただきます!って食うだけだわ」
「まぁ流石にサルミアッキは…ないと思いますから…」

10分後。俺たちを迎えに来た石蕗さんは何故か両手にビニール袋を提げていた。

「商店街の福引で笹本さんがいただきまして。よければ」
「サルミアッキですわよ!?!?」
「すげぇ!!!ねぇやっぱ俺らに盗聴器とか仕掛けてません!?腹踊りとか興味あります?」
「ありません、しまってください」

サルミアッキ•••北欧で古くから親しまれているお菓子。
グミ。食べなれない人にはお勧めしづらいが慣れればクセになるとかならないとか。カルディとかに売ってる。
この後ジャングルジムに登って食べた。
子供用の遊具ってやっぱり子供用の優遇だよな。
頭とひじめちゃくちゃぶつけた。痛かった。

9/22/2024, 2:46:20 PM

声が聞こえる

すみません枠だけ 後日書きます

9/20/2024, 1:26:52 AM

時間よとまれ

すみせ枠だけ

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