しるべにねがうは

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ジャングルジム

「お嬢はスカートだから絶対のぼんなよ」
「中にジャージを履いているので大丈夫です!」
「前言撤回、お嬢がスカート汚して怒られるの俺だからやめて!!」
「汚さないように登りますので大丈夫ですわ〜!」

お嬢は公園の遊具に弱い。もう登頂してるもんジャングルジム。
昨今は撤去されてるものが多いから余計にか?
子供がいる時は遊ばないけど、遠慮をしなくていいなら全力で遊びに行く人である。ブランコ大好き。あれ子供だった時は意識しないけど子供用ってマジで小さいよな。乗れる時に乗んなきゃだよな。
というわけで俺はブランコ乗ります。だって主役の子供いないし。端役がはしゃげるのは今だけなのだ。

「ずるいですのよ、ブランコは!」
「お嬢もブランコにしろよ、座るところにタオル敷けば汚れないだろ」
「折ジワがつきますので」
「既にやらかしたことあんだな」
「こんな事なら体操着で帰れば良かったですかね…」
「それよりは笹本さんか石蕗さんにねだろうぜ、中庭作って公園みたいな風にしてって。絶対その方が良いって。」
「そうですかねぇ〜〜?今の庭は今が最高なんですよ?四季折々の花が途切れる事なく咲き続けるあの庭の努力と技術と才能を君は知らないからそんな事言うんでしょう?」
「でもそれとこれとは別じゃねぇの?あそこで走り回るわけにはいかんだろ」
「そりゃそうですよ」
「俺たちがいいなーって言ってんのは走り回る用の庭だろ」
「…………そうです、かねぇ」
「つまりドッグランだ」
「ねぇどこから犬が生えたんですか」

ブランコを漕ぎながらだらだらする会話は中途半端に心地よい。しりとりしなくていい瞬間久々すぎて涙出そう。俺たちがいる場所は普通の住宅街の公園だ。
学校の帰り道。夕方。逢魔時。条件揃い踏みだけどお化けが全くいない理由は既にここがお化け空間の中であると言う事です。ボスおばけはさっきお嬢がなんとかしました。今?石蕗さんの迎え待ち。学校出た時からずっと夕方なんだけど外では何時なんだろう。
腹時計的には七時とかだと思う。高校生の腹時計って割と信用できる感ある。まぁ俺少食だけど。
俺がブランコを漕ぐ向かいでお嬢はスイスイとジャングルジムを登ったり降りたりしている。スカートの裾を腹辺りで結ぶ作戦だ。まぁ汚れなきゃいいだろ。多少のシワはなんとかなるだろうし。

「そういやお嬢は腹大丈夫か」
「へ?怪我とかありませんよ?」
「そっちじゃなくて。腹減ってねぇ?カロリーバー食う?」
「サルミアッキ味があるなら考えなくも無いです」
「いらねぇって事な、了解」
「すみません偏食で……」
「石蕗さんなら持ってんだろうなって思ったわ今…」
「流石にもってたら拍手しますよ、拍手じゃ足りないですけど」
「俺も拍手じゃ足りねぇよ衝撃の表現には…腹踊りとかしようかな」
「されても困惑しかしませんよ」
「なんか食べ物あります?って聞いてサルミアッキ出てきたらその方が困惑するけど俺」
「その流れで腹踊りされた石蕗どんな顔したらいいんですか」
「笑えばいいんだよ、笑えば……」
「引き攣った笑いしかないですわよ、やめてくださいちょっと想像しちゃったでしょ!」
「笑いながら言ってんじゃねぇよ、ねぇそんな面白そうなの石蕗さんの引き攣り笑い?」
「石蕗が笑顔じゃ無い時って…無いでしょう、想像つかないんですよ、もう想像上でしか無いのに面白そうなの酷いでしょう!?」
「今の俺が悪いの!?よっしゃもういい、石蕗さんが来たら聞こうじゃねぇかよ、なんか食いもんあります?って」
「サルミアッキ以外が来たらどうするつもりですか」
「どうもしねぇわ!いただきます!って食うだけだわ」
「まぁ流石にサルミアッキは…ないと思いますから…」

10分後。俺たちを迎えに来た石蕗さんは何故か両手にビニール袋を提げていた。

「商店街の福引で笹本さんがいただきまして。よければ」
「サルミアッキですわよ!?!?」
「すげぇ!!!ねぇやっぱ俺らに盗聴器とか仕掛けてません!?腹踊りとか興味あります?」
「ありません、しまってください」

サルミアッキ•••北欧で古くから親しまれているお菓子。
グミ。食べなれない人にはお勧めしづらいが慣れればクセになるとかならないとか。カルディとかに売ってる。
この後ジャングルジムに登って食べた。
子供用の遊具ってやっぱり子供用の優遇だよな。
頭とひじめちゃくちゃぶつけた。痛かった。

9/23/2024, 2:20:33 PM