秋雨ノ源

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7/2/2024, 7:31:15 AM

【窓越しに見えるのは】

子供の頃
車に乗って出かけるのが好きだった
窓の外を見ると
全ての景色が流れていく

右の窓を見れば右へ
左の窓を見れば左へ
不思議では無いが
もの知らぬ子供だった私は
不思議で好奇心いっぱいに眺めていた

海辺を走っている時
走っている車に並走するように
海鳥が並んでいた時は
目をキラキラさせていたものだ

子供の頃の車窓とは
まるで映画のワンシーンかのよう
アニメの盛り上がりシーンかのよう
ワクワクの画面であった

4DXなんて目じゃない
窓を開ければ
風・水・香り全てを感じられる
自然の体感アトラクションであった

今は当たり前になってしまった
窓辺の景色...
嗚呼、懐かしい
あの頃の思ひ出

窓辺に見えているのは...

6/30/2024, 10:26:00 AM

【赤い糸】

恋の赤い糸とは西洋文化
物語上の例えによく使われる
日本古来では赤とは
血や呪の痛い色と言われている

人を呪わば穴二つ
人形の止め糸
社の暖簾
は赤で統一されている

カタ...カタ...
梅雨の時期
雨の音とは異質の甲高い音
そんな音が自室に響く

まるでヒールの音のよう

リビングの扉を開け
玄関への通路を覗き見ると
1本の赤い糸がこちらに向かって垂れている
足元を除くと

日本人形の顔がこちらを見ていた
その顔は日本人形らしからぬ
満面の口の裂けた笑みを浮かべていた

6/29/2024, 11:22:40 AM

【入道雲】

遠い先の雲をみると
天高くまで山のような
雲を見るようになった
入道雲だ

夏が来たな
と思い吹けると
生ぬるい風が頬をかする

心地よくは無い
だが時の流れに身を任せ
季節の変わり目を
体で感じる感覚は好きだ

春だと視覚的に
夏だと体感で
秋は嗅覚で
冬は聴覚で

タオルで額を拭い
空をまた見上げる
先程とは形の違う入道雲を見つめ
自転車を漕ぐのであった

6/27/2024, 10:12:10 AM

【ここではないどこか】

明るいところばかりみていた
暗いところに目がなれない...
あれ?気がついたら知らない場所
ここは...どこだろう

小学から高校を卒業
大学にも入り
満了卒業した
バイトもしたし就職にも成功した

今まで喧嘩やイジメなんて
一度もしないし受けなかった
怒られる事も数回で
悪いことなどしなかったと思う

さて、新しい道を歩いて
仕事を頑張るぞって時に
目の前が真っ暗になった
あれ?ここはどこだろう?

遠くから声が聞こえる...
「おい!ここ修正しとけって言ったよな!?」
「なにチンタラ動いてやがる!給料泥棒が!」
「あの新人全然仕事出来ないよね...」

なんだろう...
なんなんだろうこの感覚...
僕...悪いことしたかな?
あれ...胸が苦しい...
息が出来ない...

なんなんだここ...

学生のころに感じたことない
知らない感覚
この、空気感...
知らない場所...

悪意...?
甘え...?
善意...?
叱咤...?

求めてないよ...
僕はただただ働いて
給料が貰えれば良いって思ってたのに
会社のことなんて上が回せばいいって

言われたことやっただけなのに...
知らないこの闇...
明るいところに返して...
ママ...

6/26/2024, 11:25:37 AM

【君と最後に会った日】

こんにちは
僕の記憶の中にようこそ
今回は友達の話をするよ
とても可愛らしい友達のね

彼はメジロでね
竹の鳥かごに蜜柑を入れて
罠で捕まえられた子を貰ったんだ
本当はダメだよ?

近所のお爺さんに譲ってもらってね
捕まえられたってのに
蜜柑をつばんでは
コッチをみて忙しない子だったよ

3日ぐらいしたら蜜柑が悪くなってきたからね
メジロ用の餌をスプーンですくって
餌カゴの中に入れてあげたら
中々食べなくてね焦ったよ

1日したらちゃんと食べてて
安心したんだけどね
学校から帰ってきたら
「メジー!ただいまぁ!」って

今思うと安直というかなんというか
メジーって名前おかしいよね
カーテンのレースを切って作った
布を退けて挨拶してたよ

そんなある日
夏も終わり頃に差し掛かったころ
鳥籠の下の新聞を張り替えようとした時
兄が後ろからやって来て

僕を脅かしたんだ
メジーもその時僕と一緒にビックリして
開け口から飛んでいってね...
あの時以上兄を恨んだことは無かったね

「兄ちゃんのバカ!メジーが!メジーがぁ」
って一日中泣いて喚いて
何日か兄とも会話は無かったね

まぁメジロの飼育は禁止されてるから
これで良かったのかもしれないが...

そんなある日...
ゲームをしてる時ふっと外を見ると
メジロが庭先の梅の木に止まっててね
「あれ?メジー?」

急いで駆け寄ったら飛んでいったんだけど
多分、あれはメジーだったね
確証は無いんだけど
なんとなくそう思ったんだ

嬉しかったよ
逢いに来てくれて
最後に会ったのはその時だけど

あれから20年
もう生きてないだろうけど
また逢いたいと
たまに想うよ

メジー



*メジロの飼育は禁止されてましたが、
私が学生の頃、メジロ缶という餌が売ってありました

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