お題 刹那
刹那
ため息をついた刹那、またパソコンとスマホが鳴った。
「ああーっ! せっかく寝れそうだったのにぃ。」
アプリ会社につとめるあい子は某日リリースした学校用アプリ〈ボックスノート〉の評判が悪く、ずっとクレーム電話やメール、誹謗中傷コメントに対応している。
「今度もまたすごいコメントだわ。あれが公共アプリに載せられると思うと胃が痛くなるわね。」
〈「とても便利で成績アップ!」なんて謳いに乗って入れて、もう最悪ですよ。生徒からの評判は最悪だし少しは治ると思ってアップデートしたらボックスの中に個人情報を公開されてボックスごと削除しました。受験準備用ボックスだったのですべてが消し飛びました。〉
返答を打ち直そうと座り直した刹那、またスマホとパソコンが鳴り響く。
「ああっ!」
スマホを取り、メールを見ようとしたところでまた受信ボックスにメールが追加された。何かをしようとした「刹那」でストレスが溜まってしまう。
お題 生きる意味
生きる意味
生きる意味なんてものはない。あるひとは立派だ。もともと、私は底辺以下で、やっとできたボーイフレンドにふられた女。生きる意味などとうになくした。今は必要としてくれるひとがいるからで、そのひとさえ死んでしまったら私も生きる意味はない。
それも、そのひとは私の母で、要介護だから世話しているのであって、私は介護人レベルだ。
ああ、母が妹を抱いて涙を流す夢を見るのは何回めかしら? 妹を可愛がって、私をほったらかしたまま家を何日も開けて、帰ってきたと思ったら妹は青白い顔をして母の腕に横たわり、細い腕を垂らしていた。母はさめざめと泣き崩れていて、私には見向きもせずに。父は母はを責めて、責めて、責めまくり、離婚。ひとりむすめになって大切にされるかと思っても母はふさぎこみ、私は世話人レベル。。
お題 流れ星に願いを
流れ星に願いを
流れ星? 願い事? 私はそんなロマンティストではない。子どもじみたことは時間の無駄と捉えている。妻はいる。子どももいる。若かりし頃の面影を、今の私に見るやつはいない。野心に燃えたぎり、すべてを燃やすほどの勢いで突っ走り、妻には朝食と昼食の弁当と夜食を作ってもらっていた。幼かった娘は毎週末
「パパと公園」
と叫びながら飛び起きた。けれど、その娘は中学で出会った男とうまくいかずに隣アパートの屋上から飛び降りて昏睡状態だし、妻もすっかり衰えて気力を無くしているから実質ひとりだけ。妻と娘をあの世に送ることも考えた。初心の職場で出会い、メールなどをしていた女性との結婚を考えているからだ。妻子など捨てることはいとも簡単ではあるが、やはり躊躇うものがあった。かつては好き合った夫婦だし、子どももかつては愛情をめいっぱい注いだ娘だ。こうなれば妻も娘も縁を切って50歳という区切りを迎え、別の女性と歩み出してもいいのではないか。縁さえ切ればいいというものではないけれど、そうなれば再婚も許されるし、どこかでばったり、なんてことは百万分のいちだ。
と、思った私は愚かだった。妻に離婚届を出させてくれと頼むと断られ、
お題 ルール
ルール
「どれみ、ちょっと、あれヤバない?」
「スカートめくりの次いじめ覚えたらしい。」
学校で流れる嫌な噂。ルールを守らない奴のいたずらのことだ。
お題 今日の心模様
今日の心模様
心模様? 毎日同じに決まってるじゃないか。いつも何もないんだ、僕には。
「もう、あなたとはやってけないわ。」
何回、この言葉でふられたことだろうか。きのうも、僕の家柄めあてですり寄ってきた女ひとりにふられた。そいつは僕と結婚して莫大な財産をひとりじめにしようとしてたんだって、学友が言っていた。ふらレたら、負けじと言い返すつもりはない。もともと好きではないから。
「あ、そう。お幸せに。」
それだけ言えばいいんだ。あ、それで心模様はいつも灰色。アホらしいだろーが、学友のなかには研修生と恋に堕ちてるやつがいるらしいんだ。先輩学生は研修女子生徒と結婚したらしい。
「おい。おまえ、課題提出したか?」
しまった。やってしまった。ああ、今の心模様は真っ黒だ。課題提出先はあの強面教師。最悪だ。とっちめられて、下手したら宙吊りか?