りんご

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4/22/2024, 9:34:55 AM

お題 雫
    雫                        
 「母さん、ここさあ。ほんとに、氷柱みたいな雫があったのさあ。」
あぁ、これはこの家の少年の声だ。母親を引っ張って私を見に来たんだね。
「だってさあ、西森中の姉ちゃんたちが【氷柱みたいだ】【インスタ映えする】って言ってたの、聞いてたんだもの。」 
「嘘おっしゃい。雨も降ってないのに、あるわけないでしょう。」

4/20/2024, 11:58:31 PM

お題 何もいらない
       何もいらない
 【伊藤美穂子さん
       明後日、親戚の開くパーティがあります。ぜひいらしてね。 
 追伸 美穂子、あいかわらず地味なドレスなの?】
美穂子はペンを動かしていた右手を止めて届いた手紙を見た。白い便箋に品のある筆跡で書かれた文字をみると、この手紙の送り主・山田小鈴を恨めしく思う。
【山田小鈴さん
      ぜひ行かせていただきます。
 追伸 お楽しみのようでなにより。】
皮肉を付け足すと封筒に入れて住所を入れ、そばの箱にポンと入れた。
「ペン、インク少なくなってきちゃった。」
ふと思い出し、立ち上がって箱を持つ。めんどくさそうにスマホを手に取り、スニーカーを履いて外に出た美穂子は家の前のポストに箱の中身をざらざらと入れてまた気だるそうに家に入っていく。
(あいつに…….、小鈴に恥かかせられるならもう何もいらないわ。)
別の部屋に行ってクローゼットを開けると、中には美しい模様のドレスや化粧道具が詰まっている。
「小鈴の旦那さんは清弘さん。好みは蝶だったわね。 てことはこれだわ。義昭くんの好みは……..。」
ドレスを選びぬき、会場に来そうな人の好みをミックスした小物やアクセサリーに散りばめ、それとなく統一感が出るようにもととなる色はすべて白で通す。

4/19/2024, 11:10:11 PM

お題 もしも未来を見れるなら
       もしも未来を見れるなら
‘私の将来の夢は、外交官です’
その一文をみると、不安とともに喜びも湧き上がる。

4/16/2024, 10:57:24 AM

お題 夢見る心
      夢見る心
 亡くなった母の遺品整理をしていると、何冊もノートが出てきた。それらを製造している会社は母がかつて就職を夢見た会社だ。就職したいと言うことを聞いた両親によってお見合いをさせられた。母は諦めきれず、ちょっとしたものをその会社のもので足していたのは私だけが知ってる。
「母さん、なんでいつもこれなの?」
幾度聞いても、母はにっこり笑ったまま人差し指を口に当てたまま黙って買ったものをしまう。
「なんでこんなにたくさんノートばかり買ってるの? 遺品整理のこととか、考えなかったのかしら。」
すると、ユキコ姉さんが話し始めた。
「母さんはノートを買うだけじゃなかったわ。ノートに幾度も弱音を吐いてたわ。ゆみ子にいつも文房具のことを聞かれるけど答えてあげられない、父さんがノートのことを怪しんでいるとか。だから、かつて夢見た会社を密かに応援する形でノートを買い込んでたのよ。夢見る心は永遠にって題名の日記ノートをね。」

4/15/2024, 10:58:34 PM

お題 届かぬ想い
      届かぬ想い
 「彩子、仁くんと上手くやってるの?」
彩子にそう聞いたのは、彩子のもと恋敵・花江。皮肉っぷり満載の口調で言う。
「ちょっと〜、花江、そんなの聞いても無駄だよ? だって、仁くんと彩子、熱々ぶりがすごいんだもん。羨ましいよ。」
「あら、そう。私はね、あんたたちラブラブカップルのせいで彼にふられたんだから。」
「だって、彼くん、吉野くんでしょ? あのプレイボーイとまともにカレカノやった女子生徒いないんだって知ってるでしょ。」
高野彩子の彼・松村仁、彩子のもと恋敵・伊藤花江の彼・吉野那由多(なゆた)。ふたりは大親友であるがもともと仲の悪かった彼女を持ったことで体裁が悪くなり、メール以外の手段で交流することがなくなり、それを嫌がった那由多くんがこっそりと仁に頼み、花江がどれだけの頻度で仁のもとへ訪れたのか教えてもらい、別れる口実を作り上げたとか。
「花江はさ、せっかくめちゃイケメンの男子が彼になったのに浮気とかするのが良くないくせ。散々那由多くんにアピったくせに。」
那由多くんの今の彼女・囲炉裏山心愛(みあ)が皮肉めいたことを言う。
「心愛〜、言い過ぎやばくない?」

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