りんご

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お題 何もいらない
       何もいらない
 【伊藤美穂子さん
       明後日、親戚の開くパーティがあります。ぜひいらしてね。 
 追伸 美穂子、あいかわらず地味なドレスなの?】
美穂子はペンを動かしていた右手を止めて届いた手紙を見た。白い便箋に品のある筆跡で書かれた文字をみると、この手紙の送り主・山田小鈴を恨めしく思う。
【山田小鈴さん
      ぜひ行かせていただきます。
 追伸 お楽しみのようでなにより。】
皮肉を付け足すと封筒に入れて住所を入れ、そばの箱にポンと入れた。
「ペン、インク少なくなってきちゃった。」
ふと思い出し、立ち上がって箱を持つ。めんどくさそうにスマホを手に取り、スニーカーを履いて外に出た美穂子は家の前のポストに箱の中身をざらざらと入れてまた気だるそうに家に入っていく。
(あいつに…….、小鈴に恥かかせられるならもう何もいらないわ。)
別の部屋に行ってクローゼットを開けると、中には美しい模様のドレスや化粧道具が詰まっている。
「小鈴の旦那さんは清弘さん。好みは蝶だったわね。 てことはこれだわ。義昭くんの好みは……..。」
ドレスを選びぬき、会場に来そうな人の好みをミックスした小物やアクセサリーに散りばめ、それとなく統一感が出るようにもととなる色はすべて白で通す。

4/20/2024, 11:58:31 PM