暗がりの中で
僕は何も見えない。
目が壊れている訳では無い。
おそらく五感は機能しているだろう。
そうでなければ、引きちぎられる足の感覚に気づきようがない。
突然、光が目に刺さった。
眩む。やはり目は機能していたようだ。
その中にあなたがいた。
手を差し伸べ、僕を助けようとする。
体を奪おうとする何かから。
それを感じた時、僕は理解した。
「光」が強ければ強いほど、
「暗がり」は深まるのだと。
紅茶の香り
「五感で楽しむと毎日楽しいよ」
あなたはそう言って、
紅茶を仰ぐように鼻に注いでいた。
紅茶だけではない。
催眠をかける太陽と、それに抗い見る花、そして団子。
空気は重く、光が全身を突き刺す、全てが眩しい蝉時雨。纏わりつく空気にはサイダーが似合う。
美しくも悲しい夕日、そばを流れる川の匂いと音。白み出した口周りに運ぶたい焼き。
澄んだ空気と水彩画の空、山葵のような空気と麻痺した耳。ホットコーヒーの苦さは、爽やかな朝を引き立てる。
取り留めのない毎日を宝物のように扱い、遊園地に来た子供に負けず楽しむ。それがあなた。
あなただった。
今では五感ははじけ飛んでしまって、六感の方が鋭いだろう。
しかし誰もがそれに見惚れ、錆びた匂いを感じる。。色の無い空、集中線が似合う広い視界。あなたの最後の音が纏わりついて離れない。
五感を捨てたあなたは、周りを鋭くさせた。
愛言葉
学校帰り
部活でひたすら疲れていても
「愛言葉」はわすれない
会社帰り
プレゼンで失敗をしても
「愛言葉」を大切に
家事をする
名前があるものから無いものまで
次の家事は「愛言葉」
今日も色んな世界の人々が
口を揃えて言うだろう
『ただいま』『おかえり』
どこまでも続く青い空
いくら空そのものが青くても
雲がかかれば灰色で
日が傾けば赤色で
夜は濃く、朝は薄く
夏は輝き、冬は澄む
偶に考える
空は本当に青いものなのだろうか
高く高く
バカと煙は高い所へ
下から見ているよりは幸福だと知っているから