遠くの空へ 【誰かの】
離れ離れになったあの夏。
いつもの山の、いつもの場所で、
高く高く伸びる入道雲を見ている。
もう会えないけれど、あの夏は戻らないけれど、
僕は大人になりました。
中学校の教員免許をとったよ。
僕が自暴自棄で、未来も今も見えないままだった時期を生きる子供達に、今を見させて未来を歩ませる仕事をします。僕も誰かの道の一部になります。
心配しないでね。ありがとう。
!マークじゃ足りない感情
感情にもいろんな種類があって、悲しくても、辛くても、楽しくても、幸せでも、ぜーんぶ「!」がつくと思う。
そんないろんな感情が渦巻く中でもし、足りないな、と思う時は、心だけじゃなくて、身体も思考も感情で満たされているんだろう。
いつ、どこで、誰がそうなるのかなんて簡単にはわからないけれど、それがとっても幸せなものだといいな。
願い事 【大人になったら】
早く大人になりたいです!
大人になったら、おとおさんといっしょにおさけをのんで、たくさん笑いたいからです!
おかあさんのおてつだいもがんばって、たのしいこといっぱいしたいです!
子供に戻りたい。
朝起きて、夢現なまま。気づいたらスーツを着て外に出ている。思い描いていた未来など存在しないのだ、普通の生活とは理想的な生活なのだと、自分が属しているはずの社会に叩き込まれた。
父も、母も、もう何年も会っていない。会いに行く時間を作れない。元気にしているだろうか。
とりあえず、今日は早く帰れたらいい。そうしたら、1人でやけ酒でもして、天の川を睨みつけてやろう。
織姫と彦星だけは、きっとこの世界で幸せなのだろうから。
糸
糸はいつかちぎれるものだと思う、
それは運命の糸だとか、そういうのにも関係する。
いつかちぎれる。いつか離れる。
そうわかっていても、追いかけずにはいられない。
運命とはそういうものだと思う。
いつかちぎれた時。いつか離れた時。
運命が終わりを告げる時に、より一層光り輝く。
美しさとはそういうものだと思う。
マグカップ
熱湯を1センチ入れる。
ココアの粉が溶けやすいように。
よく混ぜて牛乳を入れる。
記憶を注ぐように優しく。
オーブンで温める。
記憶から経験に、知識に。
部屋を少し暗くしてから、
私だけの夜が始まる。