紅茶の香り
「五感で楽しむと毎日楽しいよ」
あなたはそう言って、
紅茶を仰ぐように鼻に注いでいた。
紅茶だけではない。
催眠をかける太陽と、それに抗い見る花、そして団子。
空気は重く、光が全身を突き刺す、全てが眩しい蝉時雨。纏わりつく空気にはサイダーが似合う。
美しくも悲しい夕日、そばを流れる川の匂いと音。白み出した口周りに運ぶたい焼き。
澄んだ空気と水彩画の空、山葵のような空気と麻痺した耳。ホットコーヒーの苦さは、爽やかな朝を引き立てる。
取り留めのない毎日を宝物のように扱い、遊園地に来た子供に負けず楽しむ。それがあなた。
あなただった。
今では五感ははじけ飛んでしまって、六感の方が鋭いだろう。
しかし誰もがそれに見惚れ、錆びた匂いを感じる。。色の無い空、集中線が似合う広い視界。あなたの最後の音が纏わりついて離れない。
五感を捨てたあなたは、周りを鋭くさせた。
10/27/2023, 3:50:39 PM