色白な子山羊。
幾度も見てきた憧憬に目を見開いた。
暖かい、震える身体。
ありがとう。
……ありがとう。
君の匂いが鼻腔に広がる。
零れそうな瞳を揺らして見つめる色が綺麗だった。
口内で君が跳ねるたび胸が脈打つ。
銀食器に鏡写しになった己を見下す。
まるで獣じゃないか。
…いや、獣だったのかもしれない。
[ぬくもりの記憶]
自分の事が嫌いだった。
綺麗事しか吐けない。
本当はぐちゃぐちゃで汚いのに。
妄想で悦に浸ったことも一度じゃない。
人として生きることが出来ないから。
あまりに最低な選択しかしなかった。
いいのかなあ。
君の人生を奪っても。
星が、月が、綺麗だね。
綺麗でそれでいて残酷だ。
南の極の空で浮いている。
落ちている。
[凍てつく星空]
大粒の涙を零しながら引き止める君。
僕だって本当は君と居たかった。
でもそれで不幸になってしまうなら、
なんて身勝手な酷い話だ。
何度も逃げればよかったと思った。
他にも手はあったんじゃないかと思った。
でも選択が全部最悪だった。
姉は逃げきれただろうか。
民衆が騒ぎ立てる。
生きたいな。
生きたかったな。
でももう僕は僕じゃないから。
さようなら。
[手放した時間]
僕はそんなに綺麗なんかじゃないよ。
沢山沢山傷があるから。
とても誰かに見せられるものじゃない。
全部過去の傷だけれど。
杞憂に苦しめられて生きている。
こんな僕知りたくなかっただろう。
見たくもなかっただろう。
突き放したい訳じゃないのに。
3.8センチメートル。
太陽じゃない。
君に焦がれて君に照らされてるんだ。
[君を照らす月]
空はずっと青かった。
水も大地も青かった。
もしもその境目がぼやけて繋がったら。
きっと泣きたくなるくらい綺麗なはず。
飛べる羽根はないけれど。
理想をこの目で見届けたい。
綺麗だ。
溢れ出てくるものに遮られて見えなくなる。
眩しい光を捉えた瞬間。
僕は何よりも美しいものに昇華する。
[透明な羽根]