手を伸ばした。
振り向いた君は微笑んだ。
突風が髪を弄る。
置いていかないで。
錆びた金属が視界に入る。
喉は酷く掠れた音しか鳴らなかった。
[届かない……]
爽やかというくらい晴れた空。
それが苦しくて木の下に逃げた。
努力しても空回り失敗ばかり。
後ろから指を刺され、
居場所なんて無かった。
上を見上げると木漏れ日が輝いた。
何とも愚かな自分と対比していて、
自己嫌悪に苛まれた。
[木漏れ日]
愛してるなんて言ったことは無い。
特殊性癖異常性癖のオンパレード。
人でないものに恋をして、
すぐ壊れるそれを涙で濡らした。
人間を語る肉塊がやけにリアルで飛び起きた。
ただの入れ物が全て生き物に見えた。
指令に従うだけの傀儡が嗤った。
ただひたすらに気持ち悪い歌。
御託を並べるだけで何もなし得ない。
愛なんて存在しないのだと、
妄想と哲学で汚れたかつての心。
[ラブソング]
目が合ったように感じた。
何かがぱちぱちと弾けた。
突然パキンと鳴って世界に色がついた気がした。
思わず振り向いた。
激しい風と音が髪を掻き立て過ぎていく。
あれからカメラを持った。
相手が人だと盗撮と言われる行為。
周りが何を言おうと進んだ。
あの瞳に惚れてしまったから。
敷かれた線を走る姿は滑稽で、
滑稽だけど凛々しく涼やかだった。
レンズ越しでもいいから見ていたいと思った。
君の名が錆びるまでずっと。
[すれ違う瞳]
透き通っているが力強い声。
ダークブルーの瞳に髪。
服にも青が乗っていて、
まるで青を纏っているようだった。
一瞬で釘付けになったその姿。
白い肌の"それ"はまるで異世界から来たような心地だ。
一挙一動に胸の高鳴りを感じそうだ。
〈Hello,master〉
でもきっと相容れない。
〈Please give me instructions〉
触れた頬は冷たかった。
〈Пожалуйста, дайте мне инструкции〉
見開いた目からはらはらと雫が落ちた。
〈Per favore, dammi istruzioni〉
下さなければいけない。
〈Por favor dame instrucciones〉
青は人間味のないぎこちなさで微笑んだ。
[青い青い]