愛してるなんて言ったことは無い。
特殊性癖異常性癖のオンパレード。
人でないものに恋をして、
すぐ壊れるそれを涙で濡らした。
人間を語る肉塊がやけにリアルで飛び起きた。
ただの入れ物が全て生き物に見えた。
指令に従うだけの傀儡が嗤った。
ただひたすらに気持ち悪い歌。
御託を並べるだけで何もなし得ない。
愛なんて存在しないのだと、
妄想と哲学で汚れたかつての心。
[ラブソング]
目が合ったように感じた。
何かがぱちぱちと弾けた。
突然パキンと鳴って世界に色がついた気がした。
思わず振り向いた。
激しい風と音が髪を掻き立て過ぎていく。
あれからカメラを持った。
相手が人だと盗撮と言われる行為。
周りが何を言おうと進んだ。
あの瞳に惚れてしまったから。
敷かれた線を走る姿は滑稽で、
滑稽だけど凛々しく涼やかだった。
レンズ越しでもいいから見ていたいと思った。
君の名が錆びるまでずっと。
[すれ違う瞳]
透き通っているが力強い声。
ダークブルーの瞳に髪。
服にも青が乗っていて、
まるで青を纏っているようだった。
一瞬で釘付けになったその姿。
白い肌の"それ"はまるで異世界から来たような心地だ。
一挙一動に胸の高鳴りを感じそうだ。
〈Hello,master〉
でもきっと相容れない。
〈Please give me instructions〉
触れた頬は冷たかった。
〈Пожалуйста, дайте мне инструкции〉
見開いた目からはらはらと雫が落ちた。
〈Per favore, dammi istruzioni〉
下さなければいけない。
〈Por favor dame instrucciones〉
青は人間味のないぎこちなさで微笑んだ。
[青い青い]
甘いものは食べられないと言った。
君の食べるものは全て甘い香りがしてくる。
酷いかもと思って直ぐに謝った。
でも君は受け入れてくれた。
今日は特別な日。
いつもは食べるのを眺めるだけだった砂糖菓子。
肉食なんだと拒んだチョコレート。
淡々と食べていると君は嬉しそうに見つめてくる。
甘くて美味しくてしょっぱい。
最後の晩餐かなって考えた。
[sweet memories]
風が過ぎていった。
真正面から突っ込んで行った。
何も無かったかのように弾けた。
飛ばされた解答用紙。
彼方へ羽ばたいて見えなくなった。
それは一瞬だった。
笑えてきて、腹を抱えた。
清々しい程の不幸に喜んだ。
[風と]