「そっと伝えたい」
休み時間、私は一人で絵を描いていた。
休み時間なのだから人の話が聞こえてくる。これをうるさいと捉える人もいれば、作業用BGMとしている人もいる。私は後者の方だ。
「____ねぇ、【好きな作品の名前】って知ってる? 最近ハマったんだけどさぁ……」
その作品の名前を耳にしたとたん、絵を描く手が止まった。……まさか、同じ教室の中に知っている人が居たとは……ぜひ、語り合いたい。
が、私にはそんな勇気も何も無い。突然、「それ、知ってる!」と声をかけても変な目で見られるだけだろう。
私の席の後ろで好きな作品、推しの話をしていてウズウズしながらも鐘がなるまで話を聞いていた。
あぁ、私にそっっと伝える事が出来る力があれば……
結局、絵は全く進んでいなかった。
「未来の記憶」
とある授業中の事だった。
「__いや、これは絶対に違うと思います!」
「____はぁ……?」
私は眠くてほぼ話を聞いていなかったが、喧嘩の様な状況になっている事だけは理解出来た。
……ん? この展開、見覚えあるな。確か……言い合いに負けるんだよね
「__わ、分かったから、これで良いよ」
ほら、やっぱり。
時々、夢で見た事もないのに何故かワンシーンだけ謎に既視感がうまれる事がある。
デジャブ……と言うのだろうか。私はこの現象を未来の記憶と呼んでいる。
……結局、なんの話し合いだったんだろう。
「ココロ」
心、私は逆に心はいらないと最近は思うようになってしまった。
心があるから私は精神的に疲れが襲ってくる。でも、心があるからこそ、楽しいとも思える。
心って難しい。心が無いと人々はそこから離れてしまい、心があると痛んでしまう。
果たして、どっちが良いのだろうか。
……やっぱり、私は心があるままでいいや。
「星に願って」
星は今まで亡くなってしまったご先祖さまが見守っている……と聞いた事がある。
正直信じてはないが時々、「今の行動っておじいちゃんも見てたんかな」とはなる。
特に悪い事をした時だ。嘘をついて免れたとき、心の中の罪悪感が先祖も見ていると囁いてくる。
悩みがあったり、願いたい時がある時はこっそり星に向かって呟く。
これが星に願うという行動なのだろうか。
「君の背中」
____学校では制服で相手の私服なんて分からない。
今日、昔からの友達のメンバーとカフェに行ってきた。
……やっぱり一番乗りだったか。そう思っているとヤケにオシャレな友達が時差で到着した。
なんなんだ、オシャレに目覚めてしまったのか。あの生徒会長でもある私の友達はちょっと短めのスカートと明らかに盛っている厚底のブーツ……
最近、皆の私服がオシャレになってきているのだ。この子だけでなく、他の友達も皆オシャレだったのだから。
私の服装を見てみる。スカートでもない普通のジーンズ。オシャレなんて興味無い人間なのだ。
ぼーっと友達の服装を見ていると友達は後ろを向いて背中を向けた。その背中は友達ではなく、一人の女子のように見えた。
___オシャレをしてきて凄いと尊敬する気持ちと私だけ取り残された黒い感情が渦巻きながらカフェに入ったのだった。