【願い事】
私はただ、朝までぐっすり眠りたいだけ。それなのに。また今日も午前3時に目が覚めるのですね……
えっと、ごめんなさい。
『空恋』って何ですか?
そういう言葉がありますか?
検索すると『恋空』ばかり出てきます。
むなしい恋?
空を恋しく思う?
でも……それならもっと別の言い方で良いと思うのです。
【波音に耳を澄ませて】
波音に耳を澄ませて、砂浜でうとうと。
気温はギリギリ泳げるくらい。つまり、それほど暑くはなかった。
私は最初から泳ぐ気はなくて、ジャージにTシャツ、パーカという楽な服装。目深にフードを被れば、日差しもあまり気にならない。
はしゃぐ人の声、波の音、程よい暖かさと強すぎない風。うたた寝にはとても……心地が良かった。
帰り際、連れから「具合が悪くなったのかと思ってた」と言われたのは、想定外。確かにレジャーシートの上で蹲ったまま、話すどころか動きもしなかったな。
「違う違う。心配かけてごめんよ」
ただ本当に、身動きするのも惜しいくらい、気持ち良かっただけなんだ。
それから何年過ぎたかわからないけれど、未だにあの日のあの浜辺ほど素晴らしい昼寝ができたことはない。
【遠くへ行きたい】
僕はずっと、異世界で生きた前世を引き摺っていた。日本には魔力も魔法もない。それが辛くて息苦しかった。
どこか遠くへ行きたい。魔法がある所ならどこでもいい。そう思っていたのは僕なのに、幼馴染が行方不明になった。
きっとあいつは生きている。そう信じてはいたものの。元々、自分が日本で働く将来なんて思い描けなかった僕は、受験勉強にはまったく身が入らなくて、大学を見事に落ちた。
社会人になることもできず、両親に頼み込んで浪人させてもらうことになり。高校の登校日には気まずい思いをしていた。そして、もうすぐ卒業式というある日。
僕の足元に魔法陣が現れた。
それはなんとなく禍々しい気配があって、良くないものだと感じたのに。どこか魔法がある世界に通じているのかと思ったら、避けることも拒むこともできなかった。
目の前が真っ白になった、次の瞬間。景色は一変し、僕は崩れかけた城の中にいた。
「何をした、魔王!!」
そう、声がして。まさか自分のことかと焦り、視線を巡らせると、銀色の甲冑姿の騎士と、趣味の悪い玉座に座った魔族がいた。
灰色の肌に捻れた角、赤い目をした偉そうな魔族だ。良かった。あっちが魔王だよな。
「アキ!? なんでアキが!」
聞き慣れた声に驚いた。騎士の隣にいたのは、金属製の胸当てと青いマントを身に着け、立派な剣を持った幼馴染だったから。
「ナオ!? そっちこそ、どうして」
「俺は勇者として召喚されて、魔王を倒しに来たんだけど!?」
そうだったのか。生きているとは思っていたけれど。無事で良かった。大きな怪我もないみたいだ。
「何をしている!!」
魔王らしき魔族が苛立たしげに怒鳴った。
「早くその勇者たちを退けろ!!」
えっと……もしかして。
「僕に言ってるの?」
「他に誰がいる! 私が呼び出したのは『全てを破壊し破滅させる者』だ。それがお前なら私に従え!!」
ああ……なるほど?
そういうことか。
「破滅させればいいんだな?」
僕は口角を上げ、笑みを作った。
ここはおそらく僕が前世を過ごした世界だ。魔力に満たされ、なんとも心地が良い。僕は前世でも滅多にしなかった詠唱を口に出した。
「混沌の魔神よ。愛し子たる我が希う。敵を滅する力を我が手に。全てを焼き尽くす業火をここに」
手のひらに集めた魔力が青い炎の塊となる。騎士がナオを庇うように動いた。でも、人ひとり盾になったところで僕の炎は防げない。
「おお……素晴らしい」
満足そうに呟いた魔王に、僕はその火球を叩きつけた。
「……!!?」
断末魔なんて聞きたくない。燃え広がっても困るから、結界できっちりと覆う。
「…………は?」
騎士の間抜けた声が聞こえた。
「僕がナオを破滅させるわけないだろ」
ナオが涙ぐんだ目で僕を見た。
「アキ……!」
「って言うか。これ魔王で合ってた? 倒しちゃって良かった?」
「もちろん! すっげー助かった! 俺、正直魔王討伐とか自信なかったし!」
結界の中の青い炎はしばらく燃え続け、消えた時には玉座も魔王も灰すら残っていなかった。
「なあなあ。なんでアキにこんなことできんの?」
「んー? 僕には前世があるんだよ。この世界で生きた記憶とか。魔法の使い方もわかるし」
「そうなんだ!?」
でもまあ。ナオが勇者だというのなら。
言わない方がいいだろうな。
先代の魔王が僕だったなんて。
【クリスタル】
クリスタルと言われて、鉱石でもアクセサリーでもなく、ゲームが思い浮かぶ私……
『F』で始まる有名なRPG
私はⅤがすごく好きだったな
リメイクもされているし、久々にやりたくなったけど
たぶんまた『すっぴんマスター』を目指したくなってしまうから
始めたらいくらでも時間が溶けるんだよねぇ