【今年の抱負】
『編み物をしたい私』
今年は手編みの靴下を増やしたいです。編むのは自分なので、これを抱負と言ってもいいんじゃないでしょうか。
『文字を手書きしたい私』
昨年は十月頃に日記や手帳を書く手が止まってしまったので、一年通して続けられるようにしたいです。
『体調が気になる私』
昨年、飲んだものの量を記録してみて『水分補給がうまくできていないと翌日体調を崩しやすい』ということがはっきりしたので、気をつけて過ごしたいですね。あと、ちゃんと栄養摂りましょう。
『ゲームをしたい私』
中途半端のまま放置しているタイトルをいい加減クリアしたいです。
『本を読みたい私』
ゆっくり紙の本を読みたいけど置く場所はないし、もっと図書館に行きたいですね。
『運動不足が気になる私』
せめて散歩くらいはしなきゃいけないと思います。
『それらを総合した私』
なんかもう、どう考えても時間が足りない。結局、今年の抱負は「時間をうまく使う」とか「欲張って夜更ししない」とかになるんじゃないかなぁ。
【新年】
一年の始まりはなぜ真冬なのか。春でもいいのに。芽吹きの頃なら、いかにも『新年』って感じがしておめでたいし、区切りが良いんじゃないだろうか。少なくとも、こんなかじかむ寒さの中で初詣での長い行列に並んだりしなくて済む。人混みで風邪をうつされるんじゃないかという心配も、春なら少しはマシになるかもしれない。
私は何度目かのため息をついた。一緒に初詣でに来ていた恋人が気遣わしげに聞いてくる。
「手袋、見つからなかったの?」
「うん……バッグとかコートのポケットの中にはなかった」
そうなのだ。どうやらどこかで落としたらしい。割と気に入ってたのに。
「なんで一月って真冬なんだろ。別の季節でもいいのに」
「何。急にどうした?」
「だって、年越しが春ならこんなに寒くないし手袋を落としたりもしないし……」
私のことをよく知る彼はクスッと笑って言った。
「毎年花粉症で大変なことになってるのに春がいいの?」
「あ。そっか、花粉」
忘れてた。ボックスティッシュを抱えて新年を迎えるのは流石に嫌だ。
「冬には冬の良さもあるよ」
のんきに言う彼を、ちょっとムスッとして見上げる。
「例えば?」
「空気が冷たいと気分が引き締まる」
「えー、そうかなぁ」
それは個人の感想というやつだろう。
「じゃあ……くっつくと暖かい、とか」
いたずらっぽく笑って、彼は手袋を外した手で私の手に触れた。
「うわ、冷たっ!」
悲鳴じみた声。私は思わず笑ってしまった。
「そりゃあ冷たいって。冷えるに決まってるでしょ、真冬だよ?」
彼はむうっと不満そうな顔をした。
「冷えすぎ。ここまで冷たくなる前にちゃんと言って」
「でも」
手が冷えたと申告したからといって、気温が上がるわけでもない。それなら少しの間、我慢してしまおうかと思っていた。
私の手を掴んだ彼が歩き出す。
「待って、おみくじがまだ……」
「帰るよ。こんな冷える場所にいたら駄目」
「せっかく来たのに」
こうなるとわかっていたから、知られたくなかったのだ。
「また来よう。新しい手袋買ってから」
翌日、私たちはショッピングモールの初売りで手袋を購入した。そして、どうにか休みの間にもう一度神社に行くことができた。
私のおみくじは大吉。
失せ物は見つかりづらいらしいけど、恋愛運は上々。今の相手を手放してはいけない、そう書かれていた。
【良いお年を】
あけましておめでとうございます。
今年も私の書く文章に目を通していただいてありがとうございます。
これからも続けていきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
個人的には『良いお年を』と言えば、続く言葉は『お迎えください』だと思っていました。
年末の挨拶としては『良いお年をお過ごしください』という形もあると知ったのは割と最近です。
この年齢になっても学ぶことは色々あります。
知らないことを恥じるより、積極的に学んでいきたいものです。
何にせよ、楽しいことが多い一年になると良いですね。
【みかん】
段ボール箱にいっぱいのみかんが届いても、ひとり暮らしでは食べきれない。贈答用などではなく、傷みやすい訳あり品なら尚更だ。
だからこれはみかんをカビさせて無駄にすることを防ぐためであって、バイト先の先輩に近付くための良い口実だなんてことは思っていないんだ……ほんの、ちょっとしか。
箱の中から見た目が良くて甘そうなやつを厳選して袋に入れた。それでも強烈に酸っぱいみかんが混ざってしまうのは仕方がない。そういうものが嫌いじゃないと良いんだけど。
潰れないよう、丁寧に運んだ。あとは先輩に渡すだけ。とはいえ、それが一番難しい。
バイト終わりの帰り際、どうにか先輩に話しかけた。
「あ、あのっ……!」
ふたりきりになってしまって緊張しすぎた。平静を装うことに失敗し、声が裏返った。恥ずかしい。顔が赤くなる。けど、先輩は笑ったりしない。やっぱり良い人だなぁ。すごく優しいんだよね。
「あの……先輩。みかん、好きですか?」
「みかん? 別に嫌いじゃないけど」
あっさりとした反応だった。残念ながら、大好きというわけではないらしいけど。
「まあ、あれば食べるよ。包丁がなくても剥けるから楽だしさ」
良かった。嫌いではなさそうだ。
「良かったら、これ、もらってください」
みかんが入った袋を先輩に差し出した。
「え? くれるの?」
「親の知り合いがみかん農家で、毎年訳ありのみかんを大量にもらうんです。こっちにも送られてきて、食べきれなくて」
袋を受け取ってくれた先輩は「ほんとにいいの?」と少し戸惑っていた。
「果物って、買うと結構高いのに」
「訳ありなので店では売れないやつだと思います。たぶん、スーパーとかに並ぶちゃんとしたみかんの方が美味しいんですけど……」
「いや、十分だよ。ありがとう」
眩しい笑顔に見惚れそうになって、慌てて表情を取り繕う。ううん、むり。たぶん今、挙動不審になっている。
「あ。そうだ。時々すごく酸っぱいのがあるんです。見分けつかなくて。その中にもあると思います、すみません……」
「いいよ、大丈夫。酸っぱいものは好きだからさ。じゃあ、いただいていくね。ありがと」
後日、先輩は笑いながら言った。
「もらったみかん、マジで酸っぱいのあるね。なんかもう『お前はすだちか!』って感じのやつ混ざってた」
「ああ、やっぱり。すみません、本当に」
「いいって。ちょっと楽しかったよ。店で買ったらあんなみかんは食べられないからね」
そう言って笑う先輩にまた見惚れた。
みかんが届いた時に連絡はした。
けれど、酸っぱいみかんのおかげで少し先輩との距離が縮まった気がして。正月に帰省したら、両親にはもう一度礼を言っておいても良いかもしれない。
【冬休み】
年末年始なんてイベントが盛りだくさんだし、ただでさえ寒くて体調を崩しやすいのに、冬休みってやつは短すぎると思うんだ。
風邪でも引いたらすぐ終わっちゃうし、下手をすると休み明けにぐったり疲れていたりするよね……
正月なんてもっと休もうよー。