マカロニサラダの妖精

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9/16/2023, 10:45:49 AM

【空が泣く】

目の前の男は変態だ。

正直言って胸糞悪いが、気を悪くしないで欲しい。

道路をゆっくり歩く老婦人に対してわざと大きな声で

「危ないよ!邪魔邪魔!」

と言って老婦人を辱めて快感を得たり、

またある時は、電車で自分の後に即座に席を奪った

女に対して笑いを堪えるように、馬鹿にしたように、

「まだ貴方のお尻の下の定期取れてないんですけど」

と言い、恥ずかしそうに謝る女に快感を得ていた。

そんな男は今、泣きながらある要求をしているのだ。

その要求はこうだ。

「僕は毎日が退屈で仕方ない。終わらない退屈が続く人生には飽きてしまった。人を辱めるだけじゃ足りないし、僕はこの手で僕を辱める。本当は人の手は借りたくないが、どうか僕を撮影して恥の絶頂までの手伝いをしてくれ。自由を手に入れさせてくれ。恥の絶頂の先で言葉、感情、呼吸まで忘れてみたいんだ。」

僕は快く承諾した。男の涙も悪くないと思ったのだ。

撮影当日は台風並みの大雨だった。

空も彼が来るのを拒んで絶望して泣いているのか。

大丈夫だよ。もっと泣いていいよ。

綺麗に撮るから。






9/15/2023, 10:39:25 AM

【君からのLINE】

元彼が亡くなった。

病死。最後まで君の隣に居続けると

決めたはずだった。

だけど君は、二股してたんだよね。

相手の女にもう近付くなと言われて私達は別れた。

故人にこんなこと言いたくはないけど、

君はクズでヘタレで無神経なヒモ男だった。

でも知ってる。君が私を愛して苦しんでいたこと。

相手の女の人が君の妹ってことも知ってた。

君は家族と絶縁したのに必死で頼んだんだよね。

本当馬鹿だ。

ちゃんと傷つけて。幻滅させてよ。嫌いにさせてよ。

でもね、最後の君からのLINEで思った。

やっぱり君はクズだ。

私に未来も何も無い。君だけって分かってる癖に。

あんなこと送ってくるなんて。






『全部捨てて一緒に逝かない?』




9/14/2023, 11:54:23 AM

【命が燃え尽きるまで】

私ね、いつもエリーちゃんと2人で閉じ込められてるの

ここは寒いし、お食事は少なくて味が薄いの

でも私全然平気よ!だってエリーちゃんがいるから!

エリーちゃんは私の天使!だけどね、

満月の夜になると、エリーちゃんは私を襲いにくるの

あぁ怖い、怖いよ怖いよ怖い怖い怖い

「助けて!誰か!お願い!エリーちゃんが来る!」

ドンッ

「エリー?何故此処にいるんだ!パパの邪魔だ!」

「エリーちゃん!?何処!おじさん助けてお願い!」

「何を言ってる!お前がエリーだ!
お前の下らん妄想にはうんざりた!戻れ!」

私がエリー?

そうだったわ 思い出した 私がエリーなのよ

私は満月の夜に全てを思い出して

夜が明けると忘れるんだ

誰も私が変人だからこのことに気付いてくれないのよ

このままじゃ私は命が燃え尽きるまで1人なんだ!

嫌だ嫌だ嫌だ忘れたくない!忘れたくないよ!




あら?エリーちゃんはどこかしら?

9/13/2023, 10:59:58 AM

【夜明け前】

今日もまた、眠れない。

僕は夢遊病でいつも人を傷つけ迷惑をかけてしまう。

それがきっかけで眠る事が怖くて怖くて、

眠るという事が難しくなってしまった。

だが、その日はいつの間にか眠ってしまっていた。

そして夜明け前、僕は目が覚めた。

僕は眠れたことに安堵を覚えた。

だが、それも一瞬だった。何故なら、

右手に、血の付着した出刃包丁が握られていたから。

隣には、母の遺体。

夢なら幸せなのに。どうか数時間前に戻してくれ。

頭の中の整理がつかず、1人で部屋をくるくる回り

必死に考えていた。僕はこの瞬間から人殺しなんだ。

だが、この時の僕は知らなかった。

全てが母の手の内ということを。

これを愛と呼ぶべきか、僕への執着と呼ぶべきか。

僕は永遠に母に囚われ生きるしかないんだ。




9/11/2023, 11:30:29 AM

【カレンダー】
_死は生の逆じゃない。延長線なんだ。
故に、死に意味を求めるな。

「幼馴染の英智のそんな考えに僕は励まされました。

僕達は数年前、一人の女性を巡り絶縁したのです。

その女性が亡くなった英知の妻、ソラでした。

ソラの死を機に僕達は時々会うようになりました。

英知の部屋のカレンダーにはソラとの予定や記念日、

写真が貼られていて、本当に胸が痛みました。

ソラは、英知を選んで幸せだったということに。

はい。それが動機です。2人を許せなかったんです。」


僕は絶対に許さない。

英知を殴って、殴って、殴ってやりたい。

だけど、2人には愛する子がいる。だから、

僕が英知の受ける罰もついでに受けてやる。

英知にソラを託したのは間違いだったけど、

間違いでもソラは幸せだったんだよ。

僕はカレンダーから剥がした2人の写真を握りしめた。









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