【些細なことでも】
妻は些細なことでも異常な程に怒り狂う
妻に異常なんて言葉を使うなど最低と思われるだろう
だが、決して私が妻を異常だと思ったことなどない
ちょっとしたことでも妻はすぐに怒り狂う
だが私は決して妻を見捨てないし見捨てたこともない
最近の私は妻の些細なことでもイライラしてしまう
少し前までの妻は私の自慢で
太陽のような人で何でも許してしまう程好きだった
いや、、、
決して今は好きでない訳では無い
決して妻に嫌気が差した訳では無い
決して私が悪いのでは無い
決して私の浮気が原因で妻が変わった訳では無い
きっと、、、
妻が異常なだけなんだ
「今から皆さんはLINEを開けません」
HRで担任からそう言われた。
面白がって笑う子達。顔をしかめる子達。
そんな大勢の中で俯く私。
事情は分からないが、私は少しホッとしていた。
「インスタはー?」そう聞く隣の席の可愛い子。
そんな可愛い子に聞かれ、
「開けないのはLINEだけですよ」と微笑む担任。
私は思わず唇を噛み締めた。
そんなんじゃ何も意味ないよ。
そんなんじゃいつもと何も変わんないよ。
そんなんじゃ私はまだ孤独だよ。
私にはLINEもDMもする相手はいないし
まず、親にスマホはまだ早いと言われている。
高校生にもなったのに。
もし皆SNSが使えなくなったら
私は可哀想じゃ無くなったかもしれない。
私はSNSの無い、たった一人の星へ行きたい。
どうせ孤独なのだから。
だけど、今だって孤独なのにこう思ってしまう。
たった一人の星で生きる人は孤独で可哀想
今日もあの子はCHANELの香水を身に纏う
きつく香る甘く贅沢な香り
去年までは薄い香りのハンドクリームだった
だけど、初めて交際をした彼氏の浮気が発覚して
別れを告げられてからあの子は一気に変わった
香りだけじゃなくメイクや服装も大人っぽくなった
何より笑顔が素敵だったあの子は
思い悩んだような表情をするようになった
人付き合いも悪くなったようだし
特に元彼の話をされると居心地悪そうにしていた
だけど、そんなあの子が可愛いんだ
僕は知っている
僕だけが知っている
香水の香りがキツくなってからのあの子から
香水に混じって微かな腐敗臭がすることを
僕は気付いている
だけど、そんなことにも気付かずに
今日もあの子はCHANELの香水を身に纏う
7時20分発の2両目
私と貴方はいつもこの電車に乗っている
貴方はいつも眠そうな顔で音楽を聴いている
「何を聴いてるんですか?」
そう聞いてみたいけれどそんな勇気、私には無い
いつだってそう思いながらただ見つめているだけ
伸びた前髪 気だるげな仕草 綺麗な輪郭
その全てに目を奪われる
この気持ちに言葉はいらない
ただ、私に気付いて欲しい
私の気持ちに気付いてほしい
きっとこの恋が終わるのは
私達が卒業するときか貴方に彼女ができたときだ
録画していた音楽番組を見ながら食べる夜ご飯
冷凍庫に放置されていたササミを消費する今日
君がいないこの部屋は静かで落ち着かない
君がここを去ってもう2週間が経ったのか
最初はすぐに戻ってくるだろうと思っていたが
どれだけ待ってもどれだけ探しても君はいない
___ぐぅ
ササミだけではやはり足りないか
「コンビニ行ってくるね」
誰もいない部屋にそう声をかける
くたびれたスニーカーを履きドアを開けると
そこには君がいた
君は困ったような顔をしてこっちを見ていた
その途端、ホッとして何だか可笑しくなって
気付いたら笑いながら君を抱き締めていた
「ごめん。ササミ食べちゃったから買いに行こっか」
君は「にゃあ」と小さく返事をした