ちか@修行中

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8/18/2024, 10:59:59 PM



そっと手を伸ばす。触れたそれは冷たく、伸ばした指先と写る指先はぴたりと触れ合うことはない。
――これが触れ合うとマジックミラーだと判別できるらしい
触れ合わない指先は、その距離の分だけそこには誰もいないことを示してくれる。
初めての部屋に通されてこわばっていた私はそこでようやく息を吐き、腕を上にあげ伸びをした。
さぁて、まずは身支度だ。
時間はあまりない。大急ぎで持って来ていた化粧ポーチを広げると鏡の前に座り、化粧に取り掛かった。

8/18/2024, 2:22:48 AM

いつまでも捨てられないもの

子どもの頃の辛い記憶はどうして捨てられないのか
1番いらないものなのだが、どうにも捨てられない
そもそも捨てることが可能なのかということになるが、捨てて軽やかな人を見ると、自分はどうしてこのままなのかと苦々しく思う
いっそのこと丸ごと全てを忘れた方が幸せだとすら思う
そんなことを考えつつ、今日も捨てられずに抱えている

8/15/2024, 11:32:03 AM

夜の海

波打ち際をゆっくりと裸足で歩く。時折足が海水に浸り、波が足の下から砂を持ち去って行く。
街の喧騒と明かりは遠く、僅かな街灯の光と波の音が辺りに満ちていた。
片手に持ったサンダルを揺らしつつ歩く。白いワンピースがひらりと広がる。
行く先はかろうじて明かりが届くだけの暗がりだ。特に目的も無く歩き続ける。
「そろそろ帰るか?」
後ろから声がかかる。てっきり浜辺の入り口にいるのかと思っていたら、ついて来ていたらしい。
「うーん、もうちょっと」
なんとなく答える。
「ならせめてUターンしてくれ。あっちは暗い」
危ないということだろうか。言われた通り振り返り、彼を正面から見つめた。
あちらもサンダルを片手に、Tシャツと七分丈のパンツを着ている。こちらを見て、なんだろう、笑っている。
「どうしたの?」
「いや、なんでも」
答えになってない。また笑っている。
「海に引き摺り込んでやろうか?」
「あはは、止めてくれ」
とうとう声を上げて笑い出した。
「何がそんなに面白いの?」
そう問うと少し苦笑して、やっと白状した。
「お前と、2人だけの世界に来たみたいで」
「この海が?」
「そう、2人っきり」
仄かに赤く染まった顔でそう言われるとやけにむず痒い。あまりのむず痒さに、彼の腕を掴むと真っ黒な海に2人で飛び込む。
彼の悲鳴と水飛沫の音が辺りに響いた。

8/14/2024, 11:04:54 AM

自転車に乗って

「はーい、もう一周だよー」
自転車に乗りながらメガホンで声をかけてくるのは我らがマネージャーだ。
基礎体力作りのため、地獄の夏合宿では毎朝宿の近くをぐるりと走ることになっている。こまめにスポドリを飲んでるとはいえ、キツい。
「あともうちょっとだよー」
その言葉を励みに走る。
ウチのマネージャーはぶっちゃけ可愛い。
白い肌にすらっとした鼻梁、薄茶の瞳を覆うまつ毛の量と長さ。日差し避けなのかキャップをかぶり、その後ろから長いポニーテールを流している。そのきらきら茶色い髪を揺らしつつ、しなやかな足が自転車を漕ぐ。白い肌は赤みを帯びていて肌もきらきらしている。その顔は困惑している……?遠くで監督のジェスチャーが見える。
「あ、監督……?え、あともう一周追加?」
「マジかよ!」
何人かが叫ぶ。このあとの準備が間に合ってないんだろうけど、そりゃないよ。
「叫ぶ余裕があるなら頑張れー」
「ぅおぉおー!」
もはやヤケである。この先も地獄の合宿は続く。けれど彼女がいればなんとか乗り越えられるだろう。

8/14/2024, 12:17:22 AM

心の健康

体は心に引きずられやすいが、心も体に引きずられやすい
どちらかが不調なら、やはりもう片方も不調なのだ
だから無理をしてはいけない
心だけは平静を保とうなど土台不可能なのだから
心の健康は体の健康なのだ

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