「愛って平和だよね」
君がそう言った。
「まぁね」
なんでそんなことが平気で言えるのだろうか。
嘘をついて私の親友と浮気をした彼への沢山の怒りと愛情は気づかないくせに。
『愛と平和』
夢を見た。
あの子と一緒に夜に星を見る夢。
どんな夢だ。だけど嫌な感じは全くしない。
「ねぇ、好きだよ」
愛の言葉を受ける。
「…うん、僕も」
そのまま流れるままに手を繋いだ。
君でよかった。
「高橋くん、大好き」
そこで目が覚める。
これが現実だったら。
『大好きな君に』#高橋くんシリーズ
「パパー」
双子の娘の姉、惺が俺を呼ぶ。
「なにー?」
「見てー、ママとおひなさま飾ったのー!」
惺はドヤ顔でひな壇を見せてきた。
「あれ、雫は?」
俺は嫁に双子の妹の雫の居場所を訊く。
「今寝てるよ、疲れちゃったんだね」
嫁はそう言ってちらし寿司の準備をし始めた。
無理もない。俺ら大人でさえ一苦労するのに子供が疲れないわけがない。
「もう、ボロボロだな」
ひな壇を見つめながら嫁に話しかける。
「そうだね、でもお義母さんがくれたものなんでしょ?」
お義母さん ——俺の母親は一年前、亡くなる前に俺たちにひな壇をプレゼントしてくれた。
『うちでも使ったけど、もう妹のさくらも家を出てしまったものだから、古いけどあげるわ』
そういってたのが脳裏に焼きついている。
「母さん、見てるかな」
「見てるといいね」
いつの間にか惺も寝てしまってる。この静かな空間で、ひな人形達が、楽しげにこちらを見ていた。
『ひなまつり』
「じゃあ、行ってきます」
私は家とお母さんに向かってそう言った。
「千代…本当に行っちゃうの?」
お母さんは寂しげに呟く。
「当たり前でしょ、大学東京なんだから」
福岡に住んでる私は、春から東京の大学に行くために引っ越すことになった。
私がいなくなったらお母さんはこの家に一人残されてしまう。
お父さんは去年病気で亡くなって、お姉ちゃんは私と同じく大学で東京にいるので、この広い家に一人暮らしすることになってしまったのだ。
一方私は、新学期で物件が埋まってしまっていたこともあって、しばらくはお姉ちゃんの家に乗り込むことになった。
「大丈夫だよ、実家にはまた顔出すから」
「分かってるわよ、じゃあ、気をつけて行ってきなさい」
「うん」
私は玄関のドアを開けた。後ろで涙を流すお母さんに気付かないフリをして。
『遠くの街へ』
君は今、どこにいるのか。
海がある場所?山のある場所?
寒い国?暑い国?
何も、分からない。
でも、僕はいつでも君を待つ。
『君は今』