「パパー」
双子の娘の姉、惺が俺を呼ぶ。
「なにー?」
「見てー、ママとおひなさま飾ったのー!」
惺はドヤ顔でひな壇を見せてきた。
「あれ、雫は?」
俺は嫁に双子の妹の雫の居場所を訊く。
「今寝てるよ、疲れちゃったんだね」
嫁はそう言ってちらし寿司の準備をし始めた。
無理もない。俺ら大人でさえ一苦労するのに子供が疲れないわけがない。
「もう、ボロボロだな」
ひな壇を見つめながら嫁に話しかける。
「そうだね、でもお義母さんがくれたものなんでしょ?」
お義母さん ——俺の母親は一年前、亡くなる前に俺たちにひな壇をプレゼントしてくれた。
『うちでも使ったけど、もう妹のさくらも家を出てしまったものだから、古いけどあげるわ』
そういってたのが脳裏に焼きついている。
「母さん、見てるかな」
「見てるといいね」
いつの間にか惺も寝てしまってる。この静かな空間で、ひな人形達が、楽しげにこちらを見ていた。
『ひなまつり』
3/4/2026, 6:43:54 AM