「じゃあ、行ってきます」
私は家とお母さんに向かってそう言った。
「千代…本当に行っちゃうの?」
お母さんは寂しげに呟く。
「当たり前でしょ、大学東京なんだから」
福岡に住んでる私は、春から東京の大学に行くために引っ越すことになった。
私がいなくなったらお母さんはこの家に一人残されてしまう。
お父さんは去年病気で亡くなって、お姉ちゃんは私と同じく大学で東京にいるので、この広い家に一人暮らしすることになってしまったのだ。
一方私は、新学期で物件が埋まってしまっていたこともあって、しばらくはお姉ちゃんの家に乗り込むことになった。
「大丈夫だよ、実家にはまた顔出すから」
「分かってるわよ、じゃあ、気をつけて行ってきなさい」
「うん」
私は玄関のドアを開けた。後ろで涙を流すお母さんに気付かないフリをして。
『遠くの街へ』
3/1/2026, 5:50:26 AM