星が溢れる
新幹線を乗り継いで、ローカル線に乗り換えて。
久々に見た、駅のホームから見える景色が、全て見慣れないものになっていたから。歓迎してくれた両親を見ても、その背景にある真新しい看板がどうしても気になってしまう。見知らぬビルが並んでる。
電柱も、こんなにもツルツルな状態は初めて見た。
凸凹だった道も、秘密基地があった駐車場も。違う。
久々に見た公園は何も変わりはなかったけど、遊具に触れることすら躊躇ってしまう。
ベンチに座って上を向く。
ああ
滲んだ空の片隅にも、やっぱりビルが映ってる。
安らかな瞳
厳かな装飾が施された、教会に吊るされている鐘の音が、正午の訪れを街ゆく人々に伝える時。
和やかな教室に響く鐘の音が、昼食の時間になったことを教える時。
あくびを一つ。目を擦る。
君を見て、笑う。
平穏な日常
当然のように皆がビールと言いながら手を挙げる中、ビールの苦味にまだ慣れていない自分だけ、ライチオレンジのカクテルを注文した。
カクテルの後、烏龍茶を飲んだ。
家に帰った後、鞄を床に置いて、バニラアイスを食べた。美味しかった。
愛と平和
映画を見た。普段は微塵の興味もないラブストーリーだったのだが、相方がどうしても見たいとせがむので、同席した形だった。
これが存外面白い。そう思った。
お金より大事なもの
郵便受けを確認するが、案の定何も届いていない。ビール瓶が詰まったレジ袋は重く、段差を上る動作に揺れる中身が、年老いた膝を打ち砕いていく。とは言えまだまだ年齢としては若い方なのではあるが、このようなことを言っている時点でもう若者ではないのだろう。
安直なヨーロッパ調の錆びた手摺。小石が剥き出しになった階段。大きく軋むわけではないものの妙に不愉快な振動を伴って開く木製の扉。汚れたシンクが取り付けられた薄暗い廊下を歩く。建物の隙間から差し込む淡い光が、テラテラとした滑らかな床材に反射している。四畳一間の寝室に、薄汚れた原稿だけが転がっている。
パソコンを買う勇気もなく、後一歩踏み出せないうちに買う金も無くなった。毎月のように紙を買う。馬鹿馬鹿しいとは分かっている。
袋を下ろしたその手で早速買ってきたビールを飲むが、温い。
もう大学生になっているであろう甥っ子の記憶の中での姿とちょうど同じ背丈の冷蔵庫に、開けっぱなしのままのカンビールを入れる。冷蔵庫を閉めると途端に暗くなったように感じる。
磨りガラスの窓を開けて精一杯の夕陽を取り込んだ部屋で、今日が曇りじゃなくてよかったと考える。書きかけていた原稿の続きを綴る。
机はないので床で描く。