スマイル(オリジナル)(異世界ファンタジー)
「君はいつも笑っているね」
そう指摘されて、私は首をかしげた。
あまり実感がなかったからだ。
「そうでしょうか?」
「そうだよ!言っとくけど褒めてるからね?」
「それはありがとうございます」
お礼とともに微笑むが、これは普通の事だと思う。
私は長い任務を終え、主の元に帰ってきた。
私の役目は様々な知識と経験を得、主の元に持ち帰る事であった。
今回の階層と経験の概要を語り、記憶の泉に出力する際、ふと思い出したので聞いてみた。
「主よ、私はいつも笑っているそうですが、なぜそのようにつくったのですか」
主は私を見て、
「当たり前だろう。皆、笑顔の人間には良い印象を得、心を許すものだからだ」
と言った。
なるほどと思う。けれど。
「それは私の経験を狭める事にはなりませんか」
主は感情の動きなども収集している。笑顔でない事で得られる経験もあるはずで、私はそれを憂慮したのだが、主は私の頭に手を置くと、
「できることならば幸せな経験を沢山集めていきたいのだよ」
と、愛おしむように言った。
「君にはずっと、優しい人でいて欲しいんだ」
主はきっと生物の性善説を信じたいのだと思う。
私はそのように理解した。
そして、その理想を私に託しているのだと。
私は頷き、今回の成果である記憶を全て泉に流した。
主は壊れてしまった。
人の傲慢さや悪辣さに絶望し、全てを壊そうとした。
それだけのことができる偉大な魔術師だった。
私は記憶の泉に流した全ての記憶を取り戻し、彼を止めるべく塔を登った。
優しくあれと私をつくってくれた主を助けたかった。
けれど、それと同じくらい、これまで出会ってきた人々を助けたかった。
「ライ!」
私の記憶を取り戻す手助けをしてくれた友が、吹き飛んでくる瓦礫から私を守ってくれた。
命の危険があるのに、共に来てくれている。
私は気を引き締めた。
空を飛び、嵐の吹きすさぶ中、主に肉薄する。
私は、主が作った最高傑作の人形だった。
誰よりも強い魔力を持つ。
巨大な魔法が双方から放たれた。
衝突による爆発が、塔の階層を消しとばす。
主は憎悪に顔を歪め、爛々と目を輝かせていた。
私は、優しくあれと笑顔につくられた本分を忘れ、悲しみと悔しさに顔を歪めた。初めての感情に頭がパンクしそうだ。涙が止まらなくて、心が痛い。
主が邪悪に笑って掌を向ける。
その先に、私の友たちがいた。
魔法が放たれる瞬間、私は射線に割り込んだ。
魔を練り上げて放つ。
主の魔法の射線をずらすことに成功したが、私の半身は今の攻撃で消し飛んでいた。
「ライ!!」
治癒魔法が飛んでくるが、自分たちの結界に使って欲しい。私は歯を食いしばり、治癒魔法を振り切って主へと飛んだ。
血の涙を流し、狂ったように笑う主を止めるために。
弾丸となった私は彼を貫き、
世界は爆発した。
どこにも書けないこと(914.6)
ここに書く時点で書けているけれど(笑)
うーん、何だろう、書けないこと。
私はいい歳して、アニメ好き、ゲーム好き、オタクである事を隠していません。
昔は引かれて馬鹿にされたものだけれど、最近はオタクも市民権を得、引かれはしても馬鹿にはされにくくなりました。
とはいえ、腐女子なのはさすがに隠してます(笑)
ましてや書いてるなんてね(笑)
身バレせず自由に書けるって良いですね。
時計の針(914.6)
私はアナログ時計が好きだ。
世の中デジタル時計に押されて、いつか時計の「針」がわからなくなる時代が来るのかなあ。
電話の「ダイヤルを回す」、録画録音の「テープを回す」記録媒体の「早送り」「巻き戻し」。
時代が変わると、何でそういう表現をするのか、あるいはそもそもどういう事なのかわからない表現が増えていくんでしょうね。
言葉は生き物だなぁ。
溢れる気持ち(オリジナル)(秘密の手紙続編)(昨日お題「Kiss」の間の話)(腐)
僕と幽霊のかずやは同居している。
憑かれているわけではないので、お互いの行動に制限はなく、別行動も自由にできる。
僕が就職してからは特に、すれ違いの多い毎日だった。
最近、かずやの様子が変だ。
目が合う時に、ちょっとドキッとするような表情を浮かべる時がある。
(あれはどういう感情の表情なんだろうなぁ)
僕は喫茶店内でアイスティを啜りながら、ぼんやりと考えていた。
道ゆく人を眺めていると、近い表情を浮かべた女性を発見する。
(あ!あんな感じ)
手を大きく振った彼女は、恋人だろう男性と待ち合わせていたらしい。合流すると、人波に消えて行った。
(….いや、やっぱりちょっと違うかな)
続けて、また、近い表情をした男性を見つける。
彼は、駆け寄ってきた幼い少女、おそらく娘と手を繋ぎ、やはり人波に消えていった。
僕は思わず赤面する。
(どうしよう)
かずやの表情が、愛しいものを見るような表情に思えてきた。
(いやいや、自意識過剰だろ、僕!)
心の機微に疎い自分が、他人の表情から正確に感情を読み解けるとは思えない。きっと気のせいだと己に言い聞かせてみるも、そもそもかずやは単純で素直。気分がすぐ顔に出る人なので、誰でもかなりの精度で感情を把握できるとも思っている。
彼は元々スポーツマンで背も高く、モテモテイケメンだった。さらに最近はハードな仕事を経験しているせいか、より大人な雰囲気も加わって、色気マシマシなのである。
その彼にあんな風に見つめられたら、女性はイチコロだろう。
(僕だってクラクラするのに!!)
オタク特有の表現で言うならば「抱いて」である。
「………いや、ダメだろそれは」
「何が?」
耳元で急にかずやの声がして、僕は飛び上がった。
椅子から転げ落ちそうになって、なんとか踏みとどまる。
「おっとあぶね、聡どした?」
「どしたじゃないよ!急にびっくりしたよ」
僕は周囲に怪しまれないよう小声で文句を言った。
かずやはニコニコして、
「ごめんごめん。遅くなって悪かった。すっげー急いで飛んできた。映画、間に合う?」
そう、今日は二人で映画を観に行く約束をしていたのだ。スマホの時刻を確認するに、ちょうど良い時間である。
「30分前だから映画館に向かおうか」
「了解」
僕らは連れ立って映画館に向かった。
僕の好きなアメコミ風トンデモ洋画だった。
すごく面白かったので、最寄駅から家まで歩く道すがら、興奮してずっとかずやに感想をまくしたてていたのだが、ふと気がつくと、かずやが例のあの表情をしていた。
空気が柔らかくて、なんかちょっとくすぐったい。
(…やっぱり愛しいは違うよなぁ…ただのオタクの早口だしなぁ…微笑ましい、うん、これだ)
僕はなんとか納得いく答えを見出して、ひとりホッと胸を撫で下ろした。
Kiss(オリジナル)(秘密の手紙続編)(腐)
「やっと自覚しましたか」
3年前、俺を最期の手紙配達員にスカウトし、そのまま指導員をしている男が、急に現れてそう言った。
「……何を」
俺はわかっていながら無駄な抵抗を試みる。
彼は呆れたように笑って、
「あなたが成仏できない理由ですよ」
と言った。
俺は事故で死んだ時、彼に心残りを打ち明けた最期の手紙を託した。それは無事相手に届いたのだが、俺は成仏しなかった。
成仏しないのは配達員にスカウトされたからだと思っていたのだが、もしかしたら手紙を作成した時点で成仏できない事がわかっていたのかもしれない。
本人も無自覚だった、叶えたい願い。伝えたい想い。
「……自覚したところでな…」
俺は絶望して呟いた。
幼馴染の男友達に恋心を抱いている。
けれど、男同士。受け入れてもらえるわけがない。
伝えるだけで満足か?
俺はどこまで求めてる?
フラれて成仏できるだろうか。
ショックで悪霊になったらどうしよう。
悶々と考えていると、それを遮るように、
「実はあなたには成仏に至る道筋が二つあります」
と声がした。
俺が顔を上げると、彼は指を2本立て、真剣な面持ちでこちらを見ていた。
「一つはもちろん、心残りをなくす事。もう一つは、配達員として働いたボーナスといいますか、一回、最大1日だけ実体化する事ができます」
「へ?すごっ!」
「ただし!実体化したらもう強制成仏です。あの世へ行っていただきます」
「…そんな事、本当にいいのか?」
「ええ。まぁ、覚悟が決まったら言ってください」
彼はそう言い、ウインクして消えた。
「実体化かぁ…」
俺は夢想する。
1日デートとか、頭を撫でるとか、手を繋ぐとか。
(小学生か!!)
いい歳の大人が考えるレベルに達していなくて凹んだ。けれど、幽霊の今、好きな相手に触れられないことは、思う以上にストレスだった。
そして、自分は歳を取らないが、彼は歳を重ねて大人になってきている。それも辛かった。
幸せになって欲しいと心から願っているが、彼に恋人や妻ができるのをそばで喜んで見守れる自信もない。
現在の居候関係の永遠を考える事はできなかった。
(まぁ、一緒にいる事に限界を感じたら使えるカードの一つとして覚えておこう)
そう、思っていた。
その時が来た。
絶対、今だと思った。
(今!)
精一杯に伸ばした手が、本当に久しぶりに肉に触れる感覚がして感動した。
(良かった!!間に合った!!!)
と、思った瞬間に、手に当たる以上の衝撃が身体中に走った。ドンっという大きな音と、金属が複数ぶつかってガラガラガシャンと跳ねる音がした。
バキボキと全身の骨が折れ、頭からドロドロした血が流れ出るのを自覚して、実体化すげえな、などとうっすら思う。
「か、かずくん?!?!」
震える声が聞こえた。
(良かった、聡は無事か)
過積載のトラックが、バランスを崩して歩道に突っ込んでいくのが見えた。その先に彼がいるのが見え、咄嗟に実体化して突き飛ばしたのだった。
俺は首も動かせずに仰向けに倒れていたが、その視界に、泣き顔の友の無事な姿が現れた。
「かずくん!?なんで?!どうしたの?これ何なの?大丈夫なの?!どうして?」
混乱して、俺の手をぎゅっと握って捲し立てた。
涙がポロポロ降ってくる。
「死んじゃダメだよ!!かずくん!!」
いや、元々死んでるんだけどな。
俺はクスリと笑おうとして、うまくいかなかった。生身ってすごい。痛い。
「さと、し」
俺はありったけの気力を振り絞った。
これが本当に最期だから、伝えなければと思った。
「すき、だった、よ…ありがと、な…」
幸せに、と続けたかったけれど、もう息が続かなかった。
「かずくん!そんなの!僕も!僕だって!」
力尽きて目を閉じた俺の両頬に手を当てて、聡は俺にキスをした。いや、人工呼吸かな?1日限定の実体化だったけど、身体がこんなになっちゃったらもう強制成仏しかないだろうな。人工呼吸しても無駄なんだけどな。聡ごめんな。
「かずくん!僕も君が大好きだよ!!愛してる!だからまだいかないで!一緒にいよう!ずっと一緒にいてよ!お願いだから!ねぇ!かずくん!幽霊にもなってくれないの?ねぇ!!」
本当になぁ。
俺は一筋の涙を流した。
俺は恥ずかしくて愛してると言えなかったけれど、正確に意図を汲んでくれた上に、同じ気持ちだったと言ってくれた。お前はなんて男前なんだ。
いつから両想いだったのだろう。
もっと早く言えていたら何か変わっていたのかな。
けれど、唯一の実体化を、聡を助けることに使えて、俺は嬉しかった。
きっとこの時のために俺は成仏しなかったんだ。
聡、ありがとうな。
俺は満足して意識を手放した。