NoName

Open App
12/20/2025, 10:54:26 AM

時を結ぶリボン(オリジナル)(SF)

好きな過去の時間に飛べる技術が開発された。
細かい技術の説明はともかくとして、概念的には、行きたい時と今を結び、そこを行き来できるという仕組みである。
動物実験では、過去に飛び、生きて帰るを成し遂げた。
研究者は皆、沸き立った。
ある者は恐竜がなぜ滅んだか見たいと言い、
ある者は忍者がどんなものか見たいと言い、
ある者は直近の過去に飛んで、未来が変わるか試してみたいと言い、
それぞれ、過去に飛んだ。

時を結ぶリボンは、蝶々結びだった。
うっかりほどけてしまい、つながりがぷつりと切れた。

失敗を糧に次に開発した技術では、リボンの結び目をなくす事に成功した。
そして再びリボンを過去に繋いだが、蝶々結び時代に過去に飛んだ者たちは、二度と帰って来なかった。

白亜紀の地層から人骨と石板が発掘されるのは、もう少し先の話。

12/19/2025, 3:14:05 PM

手のひらの贈り物(オリジナル)(異世界ファンタジー)

天上界にはオルフェという種族がいた。
人の「頭」に当たる部分のみが存在し、身体はない。
皆、やや色黒で、黒髪。尖った耳を持ち、額には揃いの金環をつけている。
彼らは総じて魔力が高く、常に宙に浮いていた。
希少種で、王直属の魔法部隊として活躍していたが、その生体は謎に包まれていた。

そのうちの一名を、天界の王女であるフィーナが、成人の儀の相棒として指名したのが始まりだった。
その旅の間にフィーナは知ったのだが、どうやらオルフェとは、敵対する地底人を斬首した姿だったらしい。しかも罪人とは限らず、地底人の力を削ぐために天界人があえて狩りをしていたとも伝え聞いた。
金環は、記憶の封印と、強力な魔力を抑える効果があったらしく、天界人たちがつけた枷であった。
切り離された頭も身体も、それぞれに生き続けていると知ってからずっと、相棒であるカマルの身体を探し続けていたのだが、ついにその在処に辿り着いた。

地下の広い空洞に石造りのベッドが並び、それぞれに、縄で括り付けられた頭のない身体が横たわっていた。
衣服はそれなりに身をつけており、手足が時々動いている。
頭の動きと連動しているのかもしれない。
異様な光景であった。
その中に、カマルの身体もあった。
身体を拘束していた縄をナイフで切ると、頭のない身体がむくりと起き上がった。
フィーナは思わず悲鳴をあげた。
カマルは口の端だけで笑った。
頭だけのカマルは己の首の位置まで飛ぶと、正面を合わせ、切断面をピタリと合わせた。
すると、接着面が綺麗につながり、見慣れぬ一人の、五体満足の地底人が、そこに復活した。
カマルはベッドから恐る恐る立ち上がった。
フィーナが少し見上げる位置に、彼の顔がある。
結構背が高い。体つきもがっちりしている。
栄養を、どう届かせていたというのだろう。
オルフェとは、否、地底人とは、本当に謎生命体で面白い。
二人の目が合った。
「おめでとう」
祝辞をおくると、普段は全く素直でない彼も、その顔に喜びを滲ませながら、
「ありがとう」
と、礼を言った。
フィーナは少し興味が湧いて、カマルの手を取った。
「…温かいのね」
「そりゃ、一応、生きてるからな」
「首はどう?ちゃんとくっついた?」
「うーん、頭だけの期間が長かったから、まだ違和感あるかな?」
そう言うとカマルは、肩をほぐすように頭を左右に傾け、それから、右を向いて、後ろを向いて、そのまま左へと一周して、前を向いた。
ホラーである。
「ひゃー!ちょっと!首くっついてない!怖い!気持ち悪い!」
「ははっ!」
鳥肌を立てるフィーナを見て、カマルは楽しそうに笑った。あまり笑顔を見ないので驚いた。新鮮である。
「まぁ、なんとかやるさ」
彼は首をすくめて、いたずらっぽく笑った。
と、すぐにその顔を真剣な面持ちに変えると、片手でフィーナを引っ張って石造りのベッドの陰に身を隠すように誘導した。
口の動きだけで「追っ手?」と聞くと、頷く。
鋭い目線で、洞窟の一方を見つめていた。
来たのとは反対方向にも、どこに出るかわからない道が続いている。そちらに向かうかと目だけで問うと、頷いて、移動を開始した。
手を繋いだまま。
(頭だけの時はできなかったな)
危険が迫っているというのに、どこか呑気にフィーナは考えた。
これまで、誘導は目線か口頭だった。カマルから魔法の援護はあるが、フィーナは基本一人で様々に対処してきた。
(身体があると、こんなに違うのか)
驚きだった。また、少し気の毒にも思う。
(頭だけなら、物音立てず、移動も楽だったのにね)
それでも、本来の姿を取り戻した事は、何より喜ばしく思う。
天界人として、同族の贖罪の気持ちもあった。
そして何より、旅の間、身体さえあれば、こんな風に守ってくれる人だと感じていたそのままの彼であった事が嬉しい。
カマルの手のひらの温もりを感じながら、それを宝物のように思うフィーナであった。

12/18/2025, 11:16:49 AM

心の片隅で(オリジナル)

友人が逮捕された。
借金に困って、詐欺行為を働いたそうだ。

彼女とは小中学校が一緒だった。
高校からは違ったけれど、同じ趣味で頻繁に会っていたし、一緒に旅行にも行ったし、誕生日にプレゼント交換もする仲だった。結婚式にも呼ばれたし、友人代表の挨拶こそ別の人の役目ではあったけれど、それなりに仲の良い部類には入っていたと思う。
いつも心の片隅で、元気にしてるかな、楽しくやっているかな、あの映画は見たかな、どんな感想を抱いたかな、そんな風に思い出す、友達だった。

なのに。
何も相談してもらえなかった。
私は、彼女が犯罪を思いとどまれるような存在にはなれていなかった。
その事がショックだった。

友達って何だろう。
私はどうすれば良かったのだろう。
そんな事をグルグルと考える。

人間不信になりそうだ。

12/17/2025, 1:29:53 PM

雪の静寂(914.6)

言葉をつくれる人を尊敬します。
雪が降るのを「しんしん」と表現した人はすごい。

上手い表現ができる人も好きです。
中島敦「山月記」の「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」には痺れました。

人生訓のような、なるほどと思える文も良きです。
坂木司「青空の卵」の「生きていく上での幸せは、誰かと分かち合う記憶の豊かさにある」なんて、素敵な考えで大好きです。

X(旧Twitter)を眺めていても、新造語や上手い表現を生み出せる人が結構いて、感心します。
どういう頭してるんでしょうね?

そういう諸々を、ずっと楽しめる自分でいたいものです。

12/16/2025, 11:52:58 AM

君が見た夢(オリジナル)

「昨日、すっごい怖い夢見ちゃった!」
ベッドの壁側に寝ていた彼女が、起きた途端にガバリと身を起こしたので、そもそもキワに追いやられていた僕は、あやうく落ちるところだった。
はみ出した片足で踏みとどまる。
「いきなりどうしたの?」
「それがさ!聞いてよ!ろっくん(僕の事)がね、そこの姿見の鏡の前に立ってるんだけど、その手に生首持ってるの!」
出がけに身だしなみを確認するのと、性癖を満足させるため、全身映るサイズの鏡がベッドの横に置いてある。その事を言っているようだった。
「生首?誰の?」
「それはわかんない。むしろ知り合いだったら怖いよ!髪はセミロングかな。その髪を雑に持っててね、めっちゃホラーだった!」
「へぇ。最近なんかホラー映画とか見た?それか、誰かを憎んでるとか?」
「そんな事ないよ!でも確かに、何の夢だろね?心配事でもあったのかなぁ。あ、あと、ろっくん、こっち見て目が合ったんだけど、殺人鬼みたいだった〜」
「ふぅん。それで、その後はどうなったの?」
「その後?」
「目が合った後」
彼女は思い出そうと中空を見上げていたが、ぺろっと舌を出すと、
「忘れちゃった!」
と、可愛く言った。
「そ?」
「うん」
僕はようやくベッドから身を起こし、
「コーヒー入れるね」
と、キッチンへ向かった。


君が見た夢。
それは、昨夜、現実にあった事だよ。


夜中に一時的に覚醒した彼女の目に映った現実であったが、すぐに寝たか気絶したかしたせいだろうか、夢の中の出来事にされてしまったようだ。
生首を鏡の裏の隠し戸棚に入れるところまでは見られなかったようである。
僕は、にっこりほくそ笑んだ。

Next