努力は報われるとか、挫折は無駄じゃないとか、
そういう綺麗事はもうたくさんなんだわ。
彼はそう言って行儀悪くしゃがみこんだ。
「現実は残酷だって、お前も分かってんだろ?」
髪を鷲掴みされて、顔だけ無理矢理引き起こされる。
「努力したって駄目な時は駄目だし、一度挫折したらそれはレッテル貼られたと同じなんだわ」
口汚く罵りながら唾を吐く。
「誰よりもずっとその言葉を信じてきた俺が、今ここにいるのが一番分かりやすい理由だろ?」
メキメキと音がして、着崩したスーツの背から真っ黒な翼が現れる。
「救いはねえし、依怙贔屓はするし、ロクなモンじゃねえよ」
三日月に開けた口の、真っ白な歯がやけに目立つ。
――あぁ、そうか。
誰よりも、ずっと。
君こそが奇跡を待ち望んでいたんだね。
END
「誰よりも、ずっと」
ぼくのたびはまだつづいている。
これからも、ずっと。
きみたちとどれだけはなれても、ぼくのたびはおわらない。
このせかいのどこかでだれかが、ぼくをみつけてくれるまで。
ぼくにたくされたきみたちのことばを、だれかがみつけてくれるまで。
たくさんのうた。
たくさんのこえ。
たくさんのことば。
たくさんのけしき。
とおいとおいせかいのはてで、だれかがこのきらきらしたものをみつけてくれるまで。
ねえ、まだみぬいせいのあなた。
このはてしないせかいに、こんなにきれいなものをつくりだす、すてきなあおいほしがあるんだよ。
ぼくはこれをいつかであうだれかにつたえたくて、ずっとずっとたびをしているんだ。
たびはつづく。
これからも、ずっと。
ねがわくば、いつかであうだれかとふりむいたとき、あおいほしがきれいなままでありますように。
END
「これからも、ずっと」
沈む夕日も昇る朝日も、じっくり見たことがない。
絶景と言われる風景を立ち止まって見たことがない。
なにかが欠けているのだろうか。
END
「沈む夕日」
見透かされてるみたいで嫌になる。
卑屈で、他責思考で、後ろ向きな自分をまざまざと思い知らされる。
自分がいかに醜くて、いかに矮小な人間か、無理矢理にでも自覚させられる。
あぁ、そうか。
君に目があるからいけないんだ。
僕が君を見てしまうからいけないんだ。
そうだろう? そうだよね?
お互いに見ることが出来ないようにしてしまえばいいんだ。
ねえ、そうしよう。
そうすれば君も、見たくもない醜いもの、視界に入れなくて済むよ。
大丈夫大丈夫。
あぁ、そう。
その目、その目が·····。
END
「君の目を見つめると」
地上で戦争が起ころうが、大災害が起ころうが、星は変わらず輝き続ける。
夜空を焦がす炎、なんて言葉のあやで、飛び散る火花もほんの一瞬の煌めきでしかない。
星の一生に比べたら、人の人生なんてそれこそ燃え落ちる夏の花火みたいなもの。なのに足掻いて、藻掻いて、泣き叫んで、怒り狂って、大笑いして、みっともないったら無い。
「·····えらく感傷的だね」
「別に」
「儚いからこそ、その輝きが尊いんじゃない?」
「そんな前向きになれない」
「·····ごめん」
「でも、いいよ。それで。君がそう言ってくれるなら、私はまだ歩けるから」
「·····他の誰がなんと言おうと、あなたは悪くない」
「私自身がそう思えないんだけど」
「あなたがあなた自身を信じられないなら、私の言葉だけ信じていればいい」
「·····」
「たとえ線香花火みたいにあっという間に終わる輝きだったとしても、私にとってはあなたの存在そのものが輝く星だよ」
「·····くっさ」
「悪かったな」
――でも、たった一人。
君の為に一瞬でも輝けるなら。
寒々とした街を二人、寄り添って歩く。
「ざまあみろ」
忌々しく見える星空に、吐き捨てるようにして呟いた。
END
「星空の下で」