せつか

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4/1/2026, 4:15:56 PM

「今年は何も無いの?」
「何が?」
「エイプリルフール。毎年何か言ってからかってただろ、俺のこと」
「あー、うん。そうね」
「歯切れが悪いな」
「なんか、もういいかなって」
「どういう意味?」
「君が私の嘘に簡単に騙されてくれるの、可愛くて好きだけどなんか怖くなってきちゃって」
「怖い?」
「·····嘘から出た真実、って言葉があるでしょ? よく考えたら本当になったら怖いなって思って。それに·····言霊って、私はあると思うから」
「·····」
「君がエイプリルフールとかに関わらず嘘をつかないのは、言葉の重みを知ってるから、なんだね」
「ふん」
「わっ·····、なに?」
「十年以上付き合ってやっと分かったか」
「悪かったな」
「·····」
「いた、·····ちょ、っと、痛いよ·····」
「別れようとか、好きじゃなくなった、とか」
「·····?」
「嘘でも二度と言わないでくれ」
「·····」
「分かったよ。二度と言わない。ごめんね」
「·····」

駄々をこねる子供みたいにしがみつく腕の強さに、愛しさが込み上げてくる。
背中に走る痛みが、今は嬉しかった。


END


「エイプリルフール」

3/31/2026, 2:33:13 PM

幸せになりたい。
何が幸せか分からないけど何となく幸せになりたい。
ただ漠然と、そう思う。

そこまで考えて、ぼんやりとそんなことを考えられる環境はもしかしてかなり幸せな方なんだろうな、と思った。


END


「幸せに」

3/30/2026, 5:11:45 PM

「〇〇さんは真面目だね」
「そんなこと無いですよ~」
「でももうちょっと自分を出してもいいんじゃないかな。もっとお喋りとかして打ち解けたらいいんじゃない?」
「あー·····、そうですかね、ハハ」

何気ないふりをしてやり過ごす。
そうして腹の内で毒づく。

ただの仕事仲間ですけど?
事務所で顔合わせたら「お疲れ様です」と言い合うだけの関係で、何で〝自分〟なんてモンを出さなきゃいけないんですかね?
おまけにクリエイティブな仕事ならともかく、私らエッセンシャルワーカーですけど?
決められたマニュアル通りに手を動かして、時間内に作業を終わらせる、この仕事のどこに自分を出さなきゃいけない場面があるんですかね?
人の悪口や噂話しかしない人達や、自分の都合ばっかり押し付ける人と別に打ち解けたくないです。

陰キャと思われても結構なんで、そのラインよりこっちに入って来ないでください。


END



「何気ないふり」

3/29/2026, 5:26:36 PM

ご都合主義なハッピーエンドよりバッドエンドの方がいい時もある。
いや、バッドエンドじゃなくてこの場合はメリーバッドエンドかな。
そもそも、どうして別離や死や敗北をイコール悪いこと、不幸なことと決め付けるんだろう。
お互いの幸せを願って別れる別離、物理的に離れても色褪せない感情、苦しい生の果てにある幸せな死、満たされて思われて逝く結末、負けたからこそ得られたもの、色々あるだろうに。
人魚姫は叶わぬ恋に、それでも賭けたから美しいのだと思うのだけれどなぁ。


END


「ハッピーエンド」

3/28/2026, 3:16:04 PM

心臓の音がうるさいくらいに響く。
顔が熱くなって、喉が渇いて、視界が滲む。
見つめられただけでこんな風になってしまうなんて。

あぁ、これ以上は駄目だ。
これでもし、あの低い鉄のような声で名前を呼ばれようものなら·····。
どうなってしまうか分からない。

だから早く、時間が過ぎていって欲しい。


END



「見つめられると」

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