「今年は何も無いの?」
「何が?」
「エイプリルフール。毎年何か言ってからかってただろ、俺のこと」
「あー、うん。そうね」
「歯切れが悪いな」
「なんか、もういいかなって」
「どういう意味?」
「君が私の嘘に簡単に騙されてくれるの、可愛くて好きだけどなんか怖くなってきちゃって」
「怖い?」
「·····嘘から出た真実、って言葉があるでしょ? よく考えたら本当になったら怖いなって思って。それに·····言霊って、私はあると思うから」
「·····」
「君がエイプリルフールとかに関わらず嘘をつかないのは、言葉の重みを知ってるから、なんだね」
「ふん」
「わっ·····、なに?」
「十年以上付き合ってやっと分かったか」
「悪かったな」
「·····」
「いた、·····ちょ、っと、痛いよ·····」
「別れようとか、好きじゃなくなった、とか」
「·····?」
「嘘でも二度と言わないでくれ」
「·····」
「分かったよ。二度と言わない。ごめんね」
「·····」
駄々をこねる子供みたいにしがみつく腕の強さに、愛しさが込み上げてくる。
背中に走る痛みが、今は嬉しかった。
END
「エイプリルフール」
4/1/2026, 4:15:56 PM