雨の日に子猫を助けてあげる優しさがあるのなら、そもそも他人に暴力振るうような人間になってないと思うんだけどな。
ギャップ萌えというけれど、子猫を助ける優しさがあろうが無かろうが、生い立ちや家庭環境が不幸せだろうがそうでなかろうが、殴られた痛みは消えないし恐怖や嫌悪は消えないよ。
それで許された気になってるなら大間違い。
END
「優しさ」
頭か後ろにどんな言葉がつくかで、世代が分かる気がする。
湾岸、シャッフル、ブルー、ラン·····。
私は湾岸だったなぁ(笑)。
END
「ミッドナイト」
明日も今日と同じ日が多分続くだろう。
根拠の無い自信でそう考えて、私は一人寝室へと向かう。
あたたかい布団、静かな夜。
寝返りを打ちながら布団の中でふと考える。
今、地震が来たらどうなるだろう。
暗い部屋を見渡して、一つ一つ確かめる。
防災バッグはそこ。
押し入れには非常食。
カバンには防災ボトルも入ってる。
カセットコンロはあるし食べ物はなんとかなる。
水が少し足りなくなるかも。
でも多分大丈夫、と一人呟いて寝返りを打つ。
安心と不安は紙一重。
どれだけ準備をしていても、不安が完全に払拭されることは無い。
でも安心材料を一つ増やして、不安を少し軽くすることは出来るはず。
END
「安心と不安」
背の高いその人を、僕はいつも見上げている。
室内でも外でも、その人はいつも光を背負っていて、見上げる僕は一度としてその顔をまともに見た事がない。
背の低い僕からは逆光になっていて、その人の顔はいつも真っ黒だからだ。
誰もが言う。
彼は温厚で、いつもにこやかに笑っているよ。
上に立つ者だからって威張ったりしないし、気さくに話しかけてくれる。
無茶な指示をされたことなんて一度も無い。
みんなあんな上司なら有難いのに。
僕も最初はそう思っていた。
逆光になって見えないその人の顔は、きっと誰もが言うようににこやかに笑っているのだろう。そう思っていた、から·····。
その日は大雨で、演習も行事も何もかも順延になって、みんな思い思いに建物の中で過ごしていた。
外では時折稲光が光って薄暗い室内を瞬間的に眩く照らす。
僕はその人と同じ部屋で、書類仕事を手伝っている。
「有難うね、手伝ってくれて」
「いえ」
短い会話を数度交わして、黙々と仕事をする。
そして何度目かの稲光。
「――」
いつもは逆光になって見えないその人の、窓ガラスが照らす顔。
そこにあるのは、〝虚無〟だった。
END
「逆光」
夏目漱石の『夢十夜』だよね。
〝こんな夢を見た〟で始まる四篇と他の六篇で構成された、十の物語。
夏目漱石という、当時の私にとって少し堅苦しい印象だった作家に俄然興味が湧いたきっかけが、この『夢十夜』だった。
教科書に載る作家、文学史という歴史に記される作家、身近じゃない、違う時代の作家。
そういう印象だった〝文豪〟という存在が、身近になった瞬間だった。
『夢十夜』『こころ』『薤露行』『幻想の盾』私が好きな作品はこのあたり。
文豪と呼ばれる作家の作品がなぜ現代も読まれているのか、うっすらとだが分かった気がする。
そう言えば、川端康成の『眠れる美女』も衝撃だったな。
END
「こんな夢を見た」