一番奥のボックス席でコーヒーを一杯。
会いたい時は帰り際、そこにメッセージを忍ばせる。冬はソーサーの下にメモの切れ端を。夏はコースターに直接書き込む。
彼が見つけてくれれば良い。もし彼以外の誰かがそれを見つけたとしても、それならそれでその日は諦める、それだけだった。
待ち合わせはいつもの場所。約束の時間に彼がいればそのまま二人でしばらく歩いて、いつものように共に夜を過ごした。
甘い言葉も、口づけも。交わした記憶はろくに無い。
ただお互いに居心地がいい。それだけだった。
あの部屋は私と彼しか知らない場所で、飽きたら契約更新をしないでそのまま別れよう、そう決めていた。
私と彼しか知らない秘密の場所。
ベッドが一つ。小さなテーブルと椅子が一組。
それ以外何も無い。それで良かった。
季節が二度巡り、部屋の窓から桜が見えるようになった三度目。
何度メッセージを残しても彼は待ち合わせ場所に来なくなった。
大切な人が出来たのだろう。
それは彼自身なのかもしれない。
それならそれで良かった。
私はまた別の部屋を借りて、彼以外の誰かと同じように過ごすだけ。
あの店のコーヒーは美味しかったけれど、もういい。
また別の店を探すだけ。
そうして私は、街をさまよう。
END
「秘密の場所」
ラララ、の後に「Lovesong」と続くか「む〇じんくん」と続くか「科学の子」と続くかで世代とか興味が分かれる気がする(笑)。
END
「ラララ」
ある種の蝶は海を渡るという。
標高の高い山を越える種もあるという。
私たち人間は、蝶より遥かに長い寿命と、遥かに大きな体と、遥かに重い脳を持っているというのに、多くのものを作り出せるというのに、いまだに自力で空を飛ぶ事すら出来ないでいる。
蝶のように、あるいは鳥のように。
いつか風に乗って空を飛べるようになる日が来るのだろうか?
そしてもしそれが叶った時·····。それを叶えた人類は今の私たちと〝同じ姿〟をしているのだろうか?
私たちにそれを知る術は無い。
END
「風が運ぶもの」
疑問に感じることはいっぱいある。
でもそれを口にすると「めんどくさい奴」と思われる。だからどうしても納得出来ないこと以外は黙ってる。黙ってるだけで、疑問が消えたわけではないからずっとモヤモヤを抱えている。
「めんどくさい奴」と思われない方法はないものだろうか。
END
「question」
〝指切りげんまん 嘘ついたら 針千本 飲ます 〟
最近、針千本どころか万本飲まなきゃいけないんじゃない? っていう人が多くないですかね·····。
END
「約束」