せつか

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2/26/2025, 3:22:23 PM

「興行収入〇億円突破」
「累計発行部数〇百万部突破」
「〇週連続ランクイン」
「〇万回再生」

そんな記録が無くたって好きなものは好きなんだけどな。作る側がこれらの記録を気にするのは当然だけどね。記録より記憶、とはよく言ったもの。


END


「記録」

2/25/2025, 3:20:55 PM

コウモリの丸焼き、シュールストレミング、カエルの唐揚げ、トナカイの血、口噛み酒·····。
世界一辛い唐辛子、世界一甘いお菓子、世界一苦いお茶·····。どれでも好きなものを食べられるよ、と言われたら、私はどれを食べるだろう?
どれも多分、食べずに死ぬことになりそうなものばかりだ。
食べた事のないものを食べるのは、知らない場所に出かける冒険に少し似ている。

END


「さぁ冒険だ」

2/24/2025, 3:38:03 PM

花を貰ったことがない。
卒業式とか、退職とか、何度か花を贈られるタイミングはあったと思う。けれどいまだに人生で花を贈られた経験が無い。
ただの一輪も。
薔薇、向日葵、カーネーション、スイートピー、チューリップ、百合·····花を見るのは好きだ。
けれど自分で買ったことはあるけれど誰かから贈られたことはない。
だから花を貰った時のリアクションというのも、自分の感覚ではなく他人のものを見て知ったものだ。
そういう人もいる。
これはただ、それだけの話。

END


「一輪の花」

2/23/2025, 3:59:11 PM

「十分に発達した科学技術は魔法と区別がつかない」
とある本に書いてあった言葉だ。

もし私が生きているこの世界の常識がすべて嘘で、真実が何もかも隠されたままの世界で生きていたのだと知ってしまったら、私は何を信じて生きればいいのだろう?
電話が通じるのは電波が飛んでるからではなく、私の声を小袋に詰めた妖精が猛スピードで相手の元に飛んでいってるから、だとしたら?
病気が苦しいのは小さな悪魔が体の中で暴れているから、だとしたら?

「·····あれ?」
そこまで考えて、立ち止まった。
私の世界、結局あまり変わってない。
電話が通じる理由も、病気が苦しい理由も今の常識とあまり変わっていないじゃないか。
理屈はどうあれ、その科学か魔法か判然としない私には未知の力で、私の世界は回っている。どちらにしても電話は相手に声が届けばいいし、病気は苦痛が無くなればいい。

魔法も科学も、結局は〝使う者次第〟ってことなんだ。


END


「魔法」

2/23/2025, 5:23:15 AM

ある日の雨上がり。
まだ灰色が残った薄水色の空に虹がかかっていた。
先にそれを見つけたのは君。
その指先を追って僕もようやく虹を見つけた。
「虹は吉兆とか凶兆とか色々言われてるよね」
君が言う。
「根元に宝物があるとか、虹が出たら災いが起こるとか」
「ただの自然現象だよ」
僕がそう言うと「私もそう思う」と、君は答えた。
「虹が出来る理由は科学的に説明がつくからね。根元には行けないし、行けたとしてもそこに宝物なんて無いし、いいことも悪いことも虹には関係ない」
それでも虹から目を離さずにいる君を、僕は横目で見つめる。
「そこに何かを見出すのは、見てる私達の心がそれを望むからだよ」
吉兆も、凶兆も。
「じゃあ何も感じない僕達は何も望んでないってことかな」
「今は、そういうことなんじゃない?」
君の言葉の意味が、その時の僕には分からなかった。

◆◆◆

虹の橋が一本、空に渡されている。
僕はそれを見上げながら、いつか君と虹を見た日を思い出した。
「あの虹の橋を渡った先に、いなくなってしまった大切な人がいるんだよ」
祖母が言っていた言葉だ。
ただの自然現象だと分かっているのに、なぜ不意にそんな言葉を思い出したのか。虹には触ることも出来ない。ましてや渡ることなんて。
分かっているのに、そんな言葉を思い出してしまうのは·····。
「見てる私達の心がそれを望むからだよ」
ああ、そうだ。
あの時の君のちょっと得意気な顔。
伸ばした指の細さ。
今もはっきりと思い出す。

いなくなってしまった大切な君が、あの虹の橋を渡った先に、いる気がして。

僕は傘を畳んで辿り着けるはずもない虹のふもとに向けて歩き出した。


END



「君と見た虹」

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