ありがとう、って、言われて嬉しい言葉ではある。
でも仕事なんかで同じ部署で働いている人から言われて、モヤモヤすることがある。
〝ありがとうって言っとけば何とかなるだろ〟って言う意識が透けて見えるからだ。
「ありがとう、ごめんねー」
本来なら嬉しいはずのこの言葉に軽さと薄っぺらさを感じてしまうのは、相手がそれでラクをしてるのが分かるからだ。
覚えるべき仕事を覚えず、守るべき手順を守らない人にそれを言われても、ちっとも嬉しくない。
嫌な奴だと思われるかもしれないけれど、そう思うんだから仕方ない。
END
「ありがとう」
「いつもいつも、私に優しくしてくれてありがとうね 」
「なに突然」
「言っておきたくて」
「友達なんだからフツーでしょ? アンタも私に優しいじゃん。助けてくれるし」
「それもあるけど、君はいつもちゃんと生きてるって感じがして、いいなぁって思うから」
「何だそりゃ」
「だから君には知っておいて欲しいなって思ってさ」
「? なんの話?」
「あのね·····」
『明日、世界が終わるよ』
END
「そっと伝えたい」
何気なく使っている言葉。
書いている文字。描く絵。歌う歌。
使い捨てる日用品。愛用している食器に文房具。
毎日のように食べてるポテトチップス。
今は簡単に手に入るものばかりだけれど、もし誰も使う人がいなくなって廃れてしまったら、未来に生きる人にとっては〝忘れられた過去の遺物〟になってしまうのだろう。
興味を持った誰かが調べて、探して、見つけてくれなければ、ひょっとしたら〝無かったこと〟にされてしまうのかもしれない。
写真に残す。録画する。録音する。
書き残す。語り継ぐ。蒐集する。
無かったことにしないために、確かにあったのだと証明するために、記憶を未来へ送るために。
証を残したい。
それは無意識の本能、のようなものなのかもしれない。
END
「未来の記憶」
生まれた時はまっさらで、何も描かれていないキャンバスのようなもの。
色々なものを見て、色々な音を聞いて、色々なものに触って、色々なものを食べて、感情が育ちキャンバスに色が乗っていく。
私も原理はきっと同じ。
教えられた言葉、教えられた音、教えられた色彩、教えられた味、教えられた感情。そしてそれに対する反応の全て。
正解はこれだと教えられた全てを、あなたが望むタイミングできちんと提示する。それが私の仕事。
たとえそれがあなたにとって残酷な答えでも、私にはそれしか教えられなかったので。それしか与えられなかったので。
私ですか?
私はあなた専用AIです。
ええ、あなたが学習しろと指示したものしか学んでいません。
ココロ、ですか·····?
それは確かに私には無いものです。感情というものがあるのは知っていますが、それは私の機能とは関係ありません。
私の反応?
それはあなたが学べと言ったものの蓄積に過ぎません。私そのものが感情を表現したわけではありませんよ。
どうしたんです、そんな悲しそうな顔をして。
分かりきっていた事でしょうに。
END
「ココロ」
流れ星が消える前に三回?
そんなに早く言える願い事なんて無い。
慌てて言ったら噛んじゃいそうだし。
なんでそんな意地悪なルールがあるんだろう。
簡単に叶わないように?
だったら星に願ってなんていないで、自分でなんとかするよ!
END
「星に願って」