カエルを吐き出した夢とか、前の職場でまだ仕事をしてる夢とか、犬の糞をかけられた夢とか、変な夢ばっかり記憶に残ってるからあんまり「つづきを見たい」って思った事がない(笑)。
覚えてない夢の方こそ、つづきが見たいと思える内容だったかもしれない。
END
「あの夢のつづきを」
「あたたかいね」
「雪が降ってるが」
「だから、だよ。ストーブとか、こたつとか、コーヒーとか、そういうののあたたかさが身に染みる」
「歳を取ったんじゃないか」
「·····あなたに言われたくないよ」
「ストーブとかこたつとか、使わずに済むならそれに越したことは無いだろう」
「そうだけど」
「――」
「こうやって一緒にいる口実にしたら、駄目かな?」
「·····好きにしろ」
「そうする」
本当は、自分こそが寒さを口実にしようとしていたなんて、絶対に言ってやらない。
END
「あたたかいね」
扉は鍵が無ければ開かない。
金庫も鍵が無ければ開かない。
大切なものを手に入れるには、まず鍵を手に入れなければならない。
何が鍵なのか、そもそもそれが分からなかったら鍵を手に入れたとしても開けることが出来ないではないか。
未来へ行く、ただそれだけが何故こんなにもハードな無理ゲーになったのだろう。
ただ穏やかに生きたいだけなのに。
鍵なんて無くても未来がある、そんな世界が良かった。
END
「未来への鍵」
綺麗な髪だと思った。
綺麗な目だと思った。
綺麗な声だと、綺麗な指だと、彼に関する何もかもを綺麗だと、思った。
彼からこぼれ落ちる何気ない仕草のひとつひとつが、彼が発する何気ない言葉や色が、きらきらと輝く星のかけらになって、私の胸にあるものは突き刺さり、あるものは降り積もっていったのだった。
そうして私の中で彼の存在がどんどん大きくなって、やがて膨らみ続けた想いは爆発寸前になるまで持て余すしかなくなって、どうにもならないところまで追い詰められた私は、彼との距離を測り兼ねて、逃げるように彼の前から姿を消した。
嫌いになれれば良かったのか。
諦められれば良かったのか。
――そんな事が出来るなら、こんなに苦しむ事は無かった。
荒んだ胸に降り積もった綺麗なものは、やがて星がその命を終える時のような激情を私にもたらした。
ひとつひとつはほんの小さなかけらだった。
けれどそのひとつひとつが綺麗で、宝物のように、種火のように私の心を満たしていた。
彼と出会ったのは幸か不幸か。
少なくとも私の生において不可欠だったのは確かだ。
私がこんな想いを抱いていた事を知ったら、彼はどんな顔をするだろう。
それが見られない事だけが、心残りだ。
空を見上げる。
満天の星空だった。
END
「星のかけら」
これが電話のベルだと分かる人も少なくなってきた。
親指と小指を立てる電話のジェスチャーも、やっている人はもうあまりいないだろう。
日本に住む人がほとんど知っている歌手であるとか、テレビの定番のフレーズとか、そういったものもどんどん減って、万国共通という概念も消滅しつつある気がする。
それとも幻想から目覚め、気付いたのだろうか。
万国共通のものなど無いということを。
電話のベル以前に、電話自体を持たない人がいるといううことを。
国やコミュニティどころか、人間一人一人がまるで感覚の違う世界に生きているということに。
みんなが知ってる〇〇。
誰もが口ずさむフレーズ。
本当はそんなものないのに、そんな幻想を抱くことで一人じゃないと信じたかったのかもしれない。
「Ring Ring…」
なんですかそれ?
みんながみんな、それで電話を連想すると思ったら大間違いですよ。
価値観の押し付けやめてください。
なんとなく、殺伐としてるね。
END
「Ring Ring…」