せつか

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11/26/2024, 3:23:34 PM

微妙な熱。微少な熱。微妙に熱。
微々たる熱。隠微な熱。軽微な熱。

どれが一番当てはまるのかな?


END


「微熱」

11/25/2024, 4:30:56 PM

「洗濯物干してくる」
「ああ」
いつものようにベランダに向かう背中に、いつものようにPCに向かったまま答えた。

月が変わって最初の休日。
天気はすこぶる良く、絶好の洗濯日和だ。季節の変わり目で増えた洗濯物に同居人はむしろやり甲斐があると言って笑った。
窓から差し込む日差しは確かに暖かい。経理の為にPCに向かう手もかじかむことは無く、集中すればあと一時間ほどで終わるだろう。昼食はどこかに食べに行ってもいいかもしれない。

違和感に気付いたのは、少し経ってからだった。
足音が聞こえない。
洗濯物を広げる音も。
不審に思い、そちらに首を巡らせる。
「――」
真っ青な空。一枚だけ干してある白いバスタオル。
そして·····。
ベランダに手を掛けたまま、長身の背中が微動だにせず立ち尽くしている。言い知れぬ不安を感じて、思わず歩み寄った。
「·····どうした」
「·····」
答えは無い。恐る恐る覗き込むと、同居人は澄み渡る空を見上げながら目尻に涙を浮かべていた。
「ごめん。太陽が·····眩しくて」
ぽつりと力無く落とした声は、それが本当の理由では無いことを伝えている。

眩し過ぎる光。強い輝き。
それは恩恵を与えてくれるが、同時に苛烈に人を責める光でもあった。
「後は私がやっておくから休んでろ」
腕を掴んでなかば強引に部屋に連れていく。薄いレースのカーテンを引いて光を遮ると、もう一度「ごめん」と呟く声と共に同居人はベッドに沈んだ。

後ろめたい事など何も無い。
互いに互いの手を取る道を選んだ。それだけだ。
けれど·····あの眩しく輝く太陽は、罪を暴く炎のように私達を照らし出す。
青い空を睨みつけながら、許されなくても構わないと、そう思った。


END


「太陽の下で」

11/24/2024, 3:53:14 PM

昔の編物の本は何故か芸能人がモデルになっているものが多かった。
自分の彼、もしくは憧れの〇〇に着てもらいたいセーターを編む、というコンセプトだったのだろう。

私自身は編物なんててんで駄目で、子供向けの編み機のオモチャもろくに動かした事が無い。綺麗にマフラーが編める母を凄いと思っていた。
だからなのだろうか、誰かが編物をしている姿を綺麗だと感じる。
最近だとオリンピックで話題になった海外の選手。
周りが歓声や何かでざわつくなか、黙々とセーターを編んでいる姿が印象的だった。
そうして完成したセーターの、可愛らしくて鮮やかなこと。何かに集中している姿の美しさと、完成した時の笑顔。彼が満たされている事が伝わってくるエピソードだと思った。

〝着ては貰えぬセーターを〟は昔あった歌だけど、編物にしろ刺繍にしろ、手仕事というものには想いが込められている気がする。
お気に入りのセーターは手編みじゃないけど、工場で作られたものだって暖かさは変わらない。それはきっと、「安価で暖かいセーターを寒さで困っている多くの人に着て欲しい」という想いがあるからだ。


END


「セーター」

11/23/2024, 3:01:29 PM

空を舞うものに憧れる。
鳥、昆虫、気球、飛行機、ドローン、宇宙船·····。
空に憧れる気持ちは誰にでもあるだろう。重力に縛られた私達は、地上から離れることに膨大なエネルギーと技術を必要とする。

でも、よくよく考えてみて欲しい。
空を舞うものはことごとく、落ちていく可能性をはらんでいるということを。

射かけられて。
撃ち落とされて。
衝突して。
故障して。
疲れ果てて。

美しい天使だって落ちていく。
空を舞うものはなんだって、落ちていくかもしれない恐怖と戦っている。
私達人間は臆病で·····その癖傲慢で·····、落ちていくというその恐怖を忘れない為に、自由に空を舞うことが出来ないようになっているのかもしれない。


END

「落ちていく」

11/22/2024, 10:19:53 PM

おしどり夫婦、仮面夫婦、亭主関白、かかあ天下·····。
夫婦を表す言葉は色々あるけれど、第三者からの視点と本人達の感覚には乖離があると思う。

おしどりは別に特別仲が良いというわけでもないし、仮面夫婦だって本人達や子供がそれで幸せならいいと思う。亭主関白もかかあ天下も、どちらかが強くて、その強い相手に言われる通りにする事が心地よい人だっている。
〝いい夫婦〟〝理想の夫婦〟と持て囃されてる人達が次の年離婚してるのなんかいくらでも見てきた。

それでも私達は何か、これが理想、これが正解、というのを知りたいのかな、と思う。


END


「夫婦」

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