胸の中に黒い泥のようなものが折り重なっていく。
声。話し方。眼差し。髪の色。歩き方。
背の高さ。浮かべた微笑み。
何気ない仕草の一つ一つが、他愛ない言葉の一つ一つが、どうしようもなく癇に障る。
こちらの皮肉に困ったように浮かべる笑みが、瞬間的に頭の奥を滾らせる。
無意識だから余計にタチが悪い。
視界に納めなければいいだけなのに、どうしたって視線が向かってしまう。
何も感じない筈の心が擦り切れ、熱を持つ。
相手はきっと感じた事などないのだろう。
「クソ·····」
こんな事で人であることを思い知らされたくなどなかった。
END
「優越感、劣等感」
我慢してきたんだよ。
アンタ、機嫌損ねると滅茶苦茶めんどくさいから。
マウント取りたがる事も、仕切りたがる事も全部知ってる。他人にしょーもないルール押し付ける癖に、自分は楽する事や手を抜く事しか考えてない。
オマケに整える、元に戻す、意味を考えるって事をしない。だからアンタの使った後の倉庫はぐっちゃぐちゃ。物の位置がいつも変わってる。間違い探しじゃねえんだよ。
もっとタチが悪いことにアンタ、誰かに自分の意見や行動を否定されると相手のせいにするよな。
そういうところが滅茶苦茶めんどくさいんだよ。
めんどくさいのを相手にするとこっちの仕事が滞るから、ずっと我慢してきたの、分かった?
◆◆◆
なーんて、堂々と言えたらなあ!!
END
「これまでずっと」
今までで一番親しみの無いお題だ(笑)。
ごめんなさい、LINEやってないんですー。
END
「1件のLINE」
「ある朝グレゴール・ザムザが目を覚ますと·····」
フランツ・カフカの『変身』。
あまりにも有名なタイトルと作者と書き出しだけれど、実は読んだことはない。
難解だという。
世の中にはそういう小説が数え切れないほどある。
それはまるで、子供の頃から近所に住んでいる、名前だけは知ってる偏屈なおじいさんみたいな感じだ。
そういうおじいさんが話してみると意外と気さくだったりするみたいに、読んでないけど読んだ気になっているこうした小説達は、読んでみたら意外とハマったりするのかもしれない。
そしてそういう小説だからこそ、忘れられることなく現代まで残っているのかもしれない。
読んでみて、「意味わかんない」となったとしてもそれはそれで読書体験としてはアリなんだろう。
世の中に溢れる小説を、私はあとどれだけ読み尽くせるだろう?
END
「目が覚めると」
私の当たり前。
推しは業界30年のベテランだけど普通に主役張れると思っている。
私の当たり前。
気になった本は絶版だろうが品切れだろうがリストに入れなきゃ気が済まない。
私の当たり前。
職場は仕事をする場所。そこで一緒になる人は上司で、同僚で、先輩で、後輩。決して友達ではない。
私の当たり前は多分、誰かにとっては当たり前じゃない変な事。
END
「私の当たり前」