せつか

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6/4/2024, 4:25:40 PM

「相変わらず足の踏み場も無いなぁ」
「崩すなよ」
「分かってるって。こっちは本格推理、こっちはファンタジー、この山はノンフィクション。ちゃんと決まってるんだよな」
「分かってるならいい」
「で、誕生日なのに祝ってくれる友達が僕しかいない君の為に持ってきたピザとチューハイはどこ置きゃいい?」
「ん」
「あははっ、テーブルあったんだ」
「まぁ、一応」
「充分だよ、さ、ハッピーバースデー!」

◆◆◆

「·····孤独死、というのかな、これは」
「でもあまり悲壮な感じはしませんね」
「この狭い中にこれだけ本があるんだからなぁ」
「お、ピザの空き箱。一人で食ってたのかな? にしては量が多いな」
「レシートがありますね。孤独死と言っても不審なところは無いのかな。交友関係も意外と分かりやすいかもしれないですね」
「·····こないだのホトケの方がよっぽど孤独に見えたな」
「ああ。タワマンで死んでた男ですね。何にも無い部屋で寒々としてたなぁ」
「本や映像は全部PCに入ってたからな。この部屋とは真逆だ」
「あっちは広い部屋でしたもんね」

「·····どっちがいい、とかじゃないんだろうけどな」
老刑事のその呟きには、微かな哀愁が漂っていた。


END


「狭い部屋」

6/3/2024, 12:11:26 PM

失恋の対義語は「得恋」と言うらしい。
失うの反対だから得る、なのか。
でも「失恋した~」とは言うけど「得恋したよ!」って言う使い方は聞いた事ないな。

「得恋」·····なんか不思議な響き。


END


「失恋」

6/2/2024, 3:03:25 PM

「正直者が馬鹿を見る」
「嘘も方便」
「残酷な真実」
「優しい嘘」

心なんてものがあるばっかりに、言葉なんてものがあるばっかりに、自分と他者を比較してしまう。
そして自分の理不尽や不遇になんとか折り合いをつけようとして、自分の言動に言い訳をしようとして、あれこれ言葉を駆使する。

人間って、厄介だね。

END


「正直」

6/1/2024, 11:43:42 PM

梅の実が熟す頃に降る雨だから「梅雨」。
春に猟期を迎えるから「鰆」。
冬まで日持ちするから「冬瓜」。
秋にとれる刀のような形をした魚だから「秋刀魚」。

気候が変わって、環境が変わって、旬も変わって、食べ物も変わって·····、百年後の人達にこれらの言葉は果たして通じるのだろうか?

END


「梅雨」

5/31/2024, 3:18:34 PM

「無垢」――純真で汚れの無いこと。

「そんな人間いるのかな?」
「少なくとも俺らじゃねーな」
「分かってるよ」
「生まれたばっかの赤ちゃんならともかく、大きくなるにつれて汚れてくのが人間だからな」
「じゃあ無垢な奴は人間じゃねーじゃん」
「妖精だ、妖精」
「ってか、そういう奴は極端に生きにくいか、逆に人生を謳歌してるかのどっちかだろうな」
「どゆこと?」
「そういう奴って、人の悪意にも気付かないんじゃないじゃねーの?」
「ああ。うーん、どうなんだろな?」
「ま、俺らみたいな汚れきった人間とは違うんじゃねーかな?」

何も描かれていない真っ白なキャンバスは、それだけではただのキャンバスで。
色が乗り、白でなくなる事で初めて意味が生まれる。
真っ白であること。何かに染まり、白でなくなること。
どっちがいいとかどっちが悪いとか、比べる事じゃないんだろうな。


END


「無垢」

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