忘れられるわけがないんだ。
私からあのひとを無くしたら、私が私で無くなってしまう。あのひとがいたから、今の私がいるんだ。
あぁ、今だけじゃない。
あのひとに出会ったあの日、あの瞬間から私の物語は始まったんだ。
だから·····あのひとを忘れてしまったら、それはもう私じゃないんだよ。
「君もそうだろう?」
彼の低い声が少し哀しく響いたのは、その感覚を私自身が覚えているからなのでしょう。
彼も私も、叶わぬ恋に身を焦がし、眠れぬ夜を幾度も過ごしてきたのです。
「そうですね」
短く答えてグラスを掲げた私に、彼がグラスを合わせます。キン、と高く鳴ったグラスの音は、私達二人を慰めているかのようでした。
END
「忘れられない いつまでも」
一年後もこうやって、このアプリでつらつらと何か書けていたらいいなぁ。
それは多分、一年後も今と同じに何とか無事に生きているという証拠だと思うから。
END
「一年後」
過去を振り返って、思えばあれが初恋だったと分かるものなのだろうか?
正直私には分からない。
胸がドキドキ高鳴るとか、目が合うだけで嬉しくなるとか、全てが輝いて見えるとか、ビビッと来たとか、漫画や小説で見たような感覚がまるで記憶に無い。
幼なじみとか同級生とか先輩とか後輩とか上司とか同僚とか同好の士とか、いい人だなと思う人や、安心できる人はいた。でもそれは恋ではないと思う。
分からない。
恋。恋。恋。
知らないまま死んだとしても、多分一向に困らない。
だけど世界はそれが至上の幸福のように恋物語に溢れてる。
物語として受容する事に抵抗は無いけれど·····私は多分、部外者だ。
END
「初恋の日」
前日にそれが分かってるなら、いつものように眠っていたい。
眠っている間に世界も自分も終わってしまえば、悲しむことも怖がることもなく済んでしまいそうだから。
END
「明日世界が終わるなら」
この国ではほとんどの人が君を知っている。
世界を広げ、自身を知り、思いを伝える。
その為には君という存在がどれほど力になっているか。
普段、生活しているだけだとそれはあまり気にならないけれど。たまにニュースで君のことを見ると思い知る。この国に生まれて良かったと思うのはこんな時。
君と出逢い、君を知り、君と共にある日々の大切さ。
この世界には君と出逢うことすら出来ず、君を知ることもなく、君と共に歩むことすら出来ない人がいる。
その苦しさは想像もつかない。
字を読むこと。字が書けること。
その有り難さを時々こうして思い出す。
君は、言葉。
END
「君と出逢って」