せつか

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忘れられるわけがないんだ。

私からあのひとを無くしたら、私が私で無くなってしまう。あのひとがいたから、今の私がいるんだ。
あぁ、今だけじゃない。
あのひとに出会ったあの日、あの瞬間から私の物語は始まったんだ。
だから·····あのひとを忘れてしまったら、それはもう私じゃないんだよ。

「君もそうだろう?」
彼の低い声が少し哀しく響いたのは、その感覚を私自身が覚えているからなのでしょう。
彼も私も、叶わぬ恋に身を焦がし、眠れぬ夜を幾度も過ごしてきたのです。
「そうですね」
短く答えてグラスを掲げた私に、彼がグラスを合わせます。キン、と高く鳴ったグラスの音は、私達二人を慰めているかのようでした。


END

「忘れられない いつまでも」

5/9/2024, 10:55:48 PM