「あぁ、また·····」
軌道を外れていく姿を見つけ、呟いた。
青い星の大気に引かれて、同胞の命が燃え尽きようとしている。
自らの体に火をつけて、宇宙で一番美しい星を少しでも近くで見ようとぐんぐんスピードを上げて、彼は堕ちていく。ワタシはその様をただ見ていることしか出来ない。
大気圏に突入した彼は、少しずつその身を削っている頃だろう。間近に見る青い星は、彼の目にどう映るのか。ボロボロになりながら、それでも青い星に根付く命に瞳を輝かせているのだろうか。
ワタシには分からない。
同胞達が美しいという青い星が、ワタシの目にはちっとも美しく見えないからだ。
みんな何故、あんなにもあの星に惹かれるのだろう?
水と生命に満ちている、それがそんなに尊いものなのだろうか?
あの青い星の、最も知能が高いという生命体は燃え尽きようとしている同胞の姿に願い事をするという。
お金が欲しいとか、恋人が出来ますようにとか、ワタシには何のことだかさっぱり分からないけれど。消えていくものに願ったところで叶うはずがないのに。
青い星に惹かれて、体中に炎をまといながら堕ちていく同胞達。
その姿を見送りながら、青い星を横目に見ながら、ワタシは軌道を外れることなく旅を続ける。
「さようなら」
もう跡形もなく消えてしまったであろう彼。
次に見るのはまた何十年か後になるであろう青い星。
ワタシは絶対、あの星に惹かれて堕ちたりなんかしない。
END
「流れ星に願いを」
規則を守る事は秩序の維持に必要な事だと思う。
理由があって定められた筈だから、その規則を守った方が物事が円滑に進むのだろう。ブラック校則みたいに理由が無い、分からない規則は改められるべきだと思うけれど、守る事に窮屈さを感じないルールなら、守って損は無い気がする。
社会人になって、ブラック校則より厄介だと思うのは、会社の社則とかじゃなく、同僚や先輩が勝手に作った〝マイルール〟だと思う。
END
「ルール」
近年稀に見るくらいのどんより気分。
仕事でちょっとやらかして、相手に申し訳ない気持ちと最近上手くいってたのに、という悔しい気持ちでぐっちゃぐちゃ。
挙げ句自分で自分の首を締める結果になって、明日以降の仕事が少しやりにくくなった。
おまけにもう一つモヤモヤが発生して、失望と諦めも混ざりあってる。
叫びたい衝動をこらえてやけ食いして、なんとか明日に繋げようとたい焼きを飲み込んだ。
気持ちを切り替えるにはもう少し時間がかかりそう。
END
「今日の心模様」
「たとえ間違いだったとしても、後悔なんかしない」
そんな台詞を何かで読んだ。
多分漫画か何かだったと思う。
私はその台詞の力強さと、言った人物のまっすぐな、自信に満ちた瞳に怯んでしまったのを覚えている。
――そんな筈あるか。
そう思ってしまった。
私なんか後悔だらけだ。
間違ったことそれ自体にも、間違って、誰かに迷惑をかけたり傷つけてしまったことにも、未練と後悔の念ばかりが積もっていく。
後悔しないと言い放つその自信はどこから来るのか。
間違えたことを悔やんで、悩んで、それでもその選択しか出来なかったことをずっと背負っていく。
フィクションはフィクションだから、夢みたいな台詞も許されるのだろう。
END
「たとえ間違いだったとしても」
ぽとりと落ちた、一雫。
それはカップの中であっという間にコーヒーと混ざり合い、跡形もなく消えていく。
無味無臭のその一雫は、けれど私とあなたの関係を一瞬で変えてしまう力を持つ。
あなたは何の疑いもなく、私が差し出したコーヒーを飲むだろう。私も向かいの席に座って、笑いながら同じようにコーヒーを飲み、クッキーに手を伸ばす。
優雅で楽しいティータイムが終わる頃、私はそっと尋ねるのだ。
「美味しかった?」
あなたはきっとああ、とぶっきらぼうに答えるだろう。私はにっこり微笑んで、良かった、と答えるのだ。そして数分と経たないうちに、あなたに変化が訪れる。
私は変わっていくあなたを見ながらまだ飲みかけのコーヒーをゆっくり味わうだろう。
あなたの目が、あなたの唇が、あなたの指が変わっていくのを、まるで花でも鑑賞するかのように見つめ続けるのだ。
ぽとりと落とした、一雫。
毒なのか薬なのか、それは私しか知らない。
END
「雫」