死ぬほど愛している、という表現は適切だろうか。
もちろんあなたに死ねと言われれば潔く飛び降りるし、殺してもらえるなら心からの喜びと共に殺されに行くけれど、
死ぬほど、死ぬほど?
私はこの愛でじぶんを殺せるほど、
愛を感じているのだろうか?
みんな、愛する人に、ではなくて、
愛という感情そのものに死ねるのだろうか。
愛そのものに対して、陶酔できるほど美しい感情だという認識は持っていない。
死ぬ、という直接的な表現が腑に落ちないのかもしれない。だったら、こんなのはどうだろう。
眠れないほど愛してる。
朝も昼も夜も関係ない。
眠る時間すら惜しい。
ずっとずっと考えていたくて、心のどこかに置いておかないと不安で、
夢でも会えるか、あなたの夢に女の子が出てきていないか心配で眠れない。
次いつあなたに会えるのか
考えるだけで辛くて、
でも考えるのはやめたくないから
眠れないのだ。
眠れないほど愛してる。
私はあなたを、あなたは私を。
「ね、パパ」
もちろんこれも全部
私の大きくて美しい嘘を切り取った
ほんの一部だけれど。
彼が突然、全部やめにしよう、なんて言った。
しんとした空気の中、彼に視線が集まる。
「ここまで頑張ってきたけど、
もう無理だろ。
俺だけじゃない。
最近誰も身が入ってないんだよ」
場が凍てついていくのが、誰の目から見ても分かるようだった。誰にとっても図星だったのだろう、
中央の彼と、ひとりも目を合わせなかった。
西村くんの葬儀の日、1番泣いてたのはアオだった。
「西村に主演、やらせようと思ってんだ。
新人発表会。」
そうはつらつとした笑顔で言っていた彼の言葉は、
こんな結果になるはずじゃなかった。
「俺が殺した」
何度も何度も髪をむしっては苦しむ様子を、彼は私以外の誰にも見せなかった。部員にはいつも明るく淡々と接していた。でも私の家では散々だった。死のうとする彼を止めるのに私も必死だった。
この発言は、アオが死ぬほど考えた結果だって、私がいちばんわかっている。
アオがいちばん、終わらせたくないはずなのだ。それなのに今、彼は自分の口から自分の言葉で、
全てにピリオドを打とうとしている。
だから私は言えなかった、
終わらせないで、なんて。