空模様
ー人の心も空模様と同じで分かりにくい。
「ニャーン」
コイツのは分かる。たぶんメシの催促だ。
「お前くらい分かりやすいと楽なんだけどな」
突然の大雨には見向きもせず、鳴き続ける猫。
ー俺もお前みたく自由気ままに生きたいよ。
鏡
「鏡よ鏡。この世で一番幸せな女の子はだーれ?」
「何を一人で鏡に向かって言っているんです?」
私が部屋で鏡に向かって喋っていると、彼が部屋に入ってきてそう言った。
「別にいいじゃない!聞いてみたかったんだから!」
「普通の鏡は何も答えてくれませんよ。・・・そうですね、代わりに僕が答えてあげます」
そう言って彼は私が持っていた鏡の裏に回り
ー僕を覗いてごらんなさい。
と言った。ひょこっと顔を出して、イタズラするように
「まぁ、僕が側についていてですがね」
とおまけのように言って。
・・・ーーーっ!?
いつまでも捨てられないもの
私が赤ちゃんの頃から使ってきた膝掛けがある。
ピンクにイチゴの模様で、洗濯表示はすり切れて読めない。長い時間を私と一緒に過ごしてきた。
これはきっといつまでも捨てられないもの。
いつか私に子供が産まれたら、その子のために使ってあげたい。
誇らしさ
自分には何もない。
お金も、知識も、才能も、綺麗な容姿や、心も。
だけど、両親から
「生きてくれているだけでいい」
と言われた。
何もないけど、こんなに優しい両親がいる。
これが私の誇りだ。
夜の海
眠れなくて、散歩をすることにした。行き先は海。
夜の海は真っ黒で、少し不気味で、昼間に見る楽しそうな海とはどこか違っていた。
周りには誰もいないから、足音と波の音しかなかった。
ふっと雲間から大きな満月が姿を見せた。暗かった海に一筋の光の線が浮かんだ。
それがあまりにも幻想的な景色だったものだから、家に帰ることにした。
明日は夜の海の絵を描こう。そのためにも早く寝ようと思ったから。