つまらないことでも
若いうちはつまらないことでも楽しむことが大切だと。
言ってくれたのは、僕の父だった。
だから僕は、なんでも楽しむことにしている。
目が覚めるまでに
珍しく早起きした休日の朝。
隣にはかわいい寝顔の君。
寝癖がついた髪の毛を手櫛でとかしてやりながら、君の寝顔を見つめる。
そんなことを君が目覚めるまでやっていた。
とある休日の朝の話。
病室
そこはいつ来ても、真っ白な部屋だった。
季節が冬だったのもあるが、天井から床に至るまで汚れと古くなって変色したところを除けば真っ白だった。
消毒液のツンとした匂い。何かの薬の匂い。
唯一明るかったのは、お見舞いの花と君の笑顔だった。
君はベッドの上で本を読んでいて、僕はリンゴの皮を剥く。紙が捲られる音とシャリシャリとリンゴの皮を剥く音が響く静かな部屋だった。
ー早く元気になって、雪遊びをしよう。
ー僕がリンゴのウサギを作れるようになるまで待って
いてよ!やっとまともな形にできるようになったん
だよ!
ーそんなの待ってられないよ!いつになるかわからな
いじゃん!
そんなくだらないことを言い合った病室。
死に限りなく近い空間で、僕らは生の約束をした。
ーちなみに、君は僕がリンゴのウサギを作れるようになる前に全回復し、僕はぶつぶつ文句を言いながら、君にせがまれて、ようやく作れるようになったウサギを作るのはまだ先の話。
明日、もし晴れたら
満天の星を見つめながら、君が僕に聞く。
「明日、もし晴れたらどこに行こうか?」
空には星が輝くばかりで、雲一つなく、このままいけば明日は晴れそうだった。
「それはとっても楽しみなことだけど、明日になってから決めようよ」
明日のお楽しみを作って、今日が終わる。
いつものことと言ったらそうだけど、それが幸せ。
だから、一人でいたい。
俺は他の奴らなんて信じない。
これまでに、信じた奴はたくさんいたが、どれも俺を裏切っていった。
何度目かわからない裏切りの後、俺は気づいた。
他の奴らは、俺を利用したいんだと。
上のランクにいる奴は、見下したくて、
下のランクにいる奴は、まだ俺がいるからと安心したくて、
ヒロインを演じたい奴は、俺を自分の都合の良い駒だと思いたくて。
だから、一人でいたい。 他の奴らなんて信じたくない。
ーその考え方は、案外すぐに壊される。
あの雨の日、君とちゃんと会話をした時に。
前回の澄んだ瞳の続編です。(みけねこ)