みけねこ

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病室
そこはいつ来ても、真っ白な部屋だった。
季節が冬だったのもあるが、天井から床に至るまで汚れと古くなって変色したところを除けば真っ白だった。
消毒液のツンとした匂い。何かの薬の匂い。
唯一明るかったのは、お見舞いの花と君の笑顔だった。
君はベッドの上で本を読んでいて、僕はリンゴの皮を剥く。紙が捲られる音とシャリシャリとリンゴの皮を剥く音が響く静かな部屋だった。
ー早く元気になって、雪遊びをしよう。
ー僕がリンゴのウサギを作れるようになるまで待って 
 いてよ!やっとまともな形にできるようになったん
 だよ!
ーそんなの待ってられないよ!いつになるかわからな
 いじゃん!
そんなくだらないことを言い合った病室。
死に限りなく近い空間で、僕らは生の約束をした。

ーちなみに、君は僕がリンゴのウサギを作れるようになる前に全回復し、僕はぶつぶつ文句を言いながら、君にせがまれて、ようやく作れるようになったウサギを作るのはまだ先の話。

8/2/2023, 1:12:23 PM